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ひらめき
「…うぅ…気持ち悪い…」
「勝ったらご褒美…彼方、がんばってな」
体育祭当日。炎天下の中に汗を拭いながらブルーシートを引く者やビデオカメラを構える者。その汗を拭った手で僕に握手を求めてくるものが跡を絶たなくただ逃げ回っていた。
あの僕が自分の招待を明かした次の日から女子達の視線はすべて僕に集まっていた。潔癖症ということも伝え僕に近づかないでといことも伝えたから絡んでくる者はいなかった。ただ練習中の黄色い悲鳴で鼓膜が破れそうになった…理人と歩叶君は毎日これに耐えてると思うとなんだか尊敬できた。
僕の噂はたちまち広まって廊下を歩いているとみんなの話し声が止み僕への視線に変わっていた。
「体育祭終わるまでだよね?終わったらもう保健室に帰っていいんだよね?もうみんなと関わんなくて良いんだよね?」
校舎の裏側の日陰で歩叶君に質問を投げかける。
「やっぱり保健室じゃなきゃ、嫌だ?みんなといて楽しくない?」
「全然っ!手を抑えないでくしゃみしてる人とか手で抑えてもその手を洗わないでみんなで触り合ってたりとか…ありえない…」
「俺が2年のクラスに行ければな…」
ボソッと呟いた歩叶君の言葉が頭の中で反復する。
「そうだ!」
「?」
「ピンポーンパーンポーン…2年生の200m走出場の選手は校庭に集まってください、繰り返します…」
「ごめん、僕行かなきゃ!」
呼び出しの声で僕は校庭に走っていった。
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