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僕だけの

「歩叶君!」 「きゃー!!」 歩叶君に呼ばれ行こうとしたら女の子達に歩叶君が連れて行かれて近くに行けなかった。何人もの女の子が歩叶君に詰め寄ってきて自分の胸を腕に当てたり絡みついたり…頬を赤くしながら歩叶君に近づいて… ズキッ… 痛い…胸が痛い…思っちゃいけないのに歩叶君の周りにいる女の子を突き放してやりたくなる…こんな気持ち初めてで自分の中に黒いモヤがかかってきて抑えられなくなる。突き放して僕だけの歩叶君だから触らないでって… このままここにいたら自分を抑えきれなくなりそうで歩叶君とは反対側に思いっきり突っ走った。自然と溢れた涙が走った勢いで一気に零れてくる。 「彼方!」 今は名前を呼ばないで欲しい。涙が止まらなくなってどこに行くとも決めないまま校舎の中に向かって走っていく。 「グズッ…あ、ゆとくん…」 走っていたらいつの間にか保健室に来ていてベッドに横たわる。幸い先生は救護テントで他の先生たちと話しているからここにはいない。 「うわぁぁ…歩叶君…ごめんなさいっ…」 ここに来るまで抑えていた声を上げ涙をこれでもかと流す。 「誰か居るの?」 扉の向こう側から女子の声がして声を止め必死に涙を拭い顔を上げる。 「入るよ?」 ガラガラッ 「こっちに来るな!」 この女の子もきっと歩叶君を前にすると同じような態度になるのだろうか。不安が湧き上がってくると共にさっきの黒い汚れた気持ちが溢れてきて声を荒げてしまう。 「彼方君なの?」 足音が近づいてくる。 ガラッ カーテンを開けるとそこには小柄な可愛らしい子が立っていた。 「来るなって言ったのに…」 今僕は髪が乱れて涙を流したせいで目が腫れているはず。こんな姿を撮られでもしたら桜城家の名に傷がつくと思い必死に顔を隠す。 「何もしないよ?大丈夫」

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