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突然に

帰ってきて風呂に入ろうと思って彼方を誘ったらもじもじとしながらもOKを出してくれた。 「な、何にもしないでよ!絶対だからね?」 「そう言ってホントはグチャグチャにされたいんじゃねーの?」 「…一緒に入ってあげないよ?」 「はいはい我儘で可愛いご主人様」 からかわれて一人で怒ってるけど、さり気なく俺の袖を引っ張ってくるあたりが可愛くてしょうがない。男に可愛いというのもなんだけど本当に可愛くて自分でもここまで人を愛する日が来ると思わなかった。 「いいよ…入ってきて」 「んじゃ、失礼します」 二人は余裕で入れる大きい風呂の隅に縮こまって体育座りをしている彼方に近づき少し抱き上げ俺の膝に乗せる。水の力でいつも軽い彼方がさらに軽く感じる。 「ちょ…何やって…ん…」 風呂場にリップ音が響いて脳内を刺激する。彼方の顔は徐々にとろけていき俺の理性を壊そうとする。 「ん…っ…ホン…トに…待っって!」 「痛え…」 本気で俺の事を突き飛ばしてきた。ぶつかったところよりも心が痛い…舞い上がってんの俺だけなのかな? 「あっ!ごめん…でも話したい事がある…」 急に静かになって緊張感が走る。まさか、別れるとか?俺のこともう嫌いとか?女の方が良いとか?頭に嫌なことばかりが浮かんでくる。 「あの…学校…ちゃんと行きたい…」 「え?」 言われたのは別れ話でも何でも無くって良く分からない事を言い出した。 「学校に行くっていうか…みんなみたいに教室に行って授業…受けたいなって…」 「え?でも俺、一応一年だから彼方に何かあっても付き添えないけど…」 「理事長にお願いしたんだ…そしたら進級試験に受かったら良いって…受かったら一緒のクラスにしてあげるって…」 「は?…お金持ち怖っ…ほんとに良いのか?」 「僕、歩叶君なら受かるって信じてるから…テストは今から1ヶ月後の7月7日…僕もできる限り教えるから頑張ってくれるかな…?」 「すんげー嬉しい…分かった頑張る!でも一ヶ月、あまり彼方に構ってあげられないけど…」 「頑張る!応援してるから!」 その日から俺は猛勉強を始めた。

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