117 / 132

入れない(Side彼方)

「…まじで俺2年になったんだ…」  歩叶君はいつもと違って2年生のネクタイ、青いストライプのネクタイを着けていて、それだけなのに雰囲気が変わった。周りからの視線を気にしながら一緒に職員室に向かう。 「先生、今日からお願いします」 営業スマイルを見せ軽くお辞儀をする姿が最初に会ったあの日の記憶を呼び戻す。 「じゃ、俺は後から行くから彼方は教室で待ってて…すぐに行くから」 「分かった!バイバイ」 ………… 「どうしよう…」 教室の前まで来たは良いけど中に入れない。体育祭以来だもん…簡単に教室に入れるわけない。てか入れたら苦労しないだろうな… 「彼方君!今日から教室に本格的に来れるようになったんだっけ?」 「えっ?光ちゃん?何で知ってんの?」 教室のドアからこっちを覗いていたのは美晴先生の妹の光ちゃんだった。 「お兄ちゃんから聞いたの!それよりも教室入りにくい感じ?」 「う…うん…教室に来るのは体育祭以来だし、みんな僕の事忘れてるかもしれないし…なんか入りにくい…でも歩叶君に心配かけたくないし?」 「あっ!そういえば歩叶君とも付き合ってるんだっけ?」 「え…何で…ぼぼぼく、つつつつきあって無いよっっ!」 あれ?僕、光ちゃんに付き合ってるって言ったけ?そんなわけ… 「全部お兄ちゃんから聞いてますっ!」 「…そっか…やっぱ男同士って…気持ち悪いよね…僕みたいなクズがあんなに格好良くてなんでもできる歩叶君と付き合っていいわけ無いよね…ごめんなさい…でも僕別れようなんて言われたら死んじゃうよ…もうどうし」 「そんな事言ってないでしょ!良いと思うよ?お似合いだと思うし、彼方君なら周りからも何も言われないはずだよ?しかも彼方君がクズなら私なんてどうなってるんだか…」 「…あり…がとう…」 「え!あれ彼方君じゃない?!嘘っ!」 「な、何?!」 「彼方君だよ!えーまた地味な格好してる!眼鏡取った方が可愛いのに!」 突然教室から女子の群れが溢れ出してきて僕の事を取り囲む。拒絶反応が出て体が震えだす。 「眼鏡取ってみてよ!恥ずかしいの?じゃ、私がやってあげる!」 「や…やだっ!やめて…よ…」 群がってくる女子に前の記憶がフラッシュバックして足に力が入んなくなってフラフラしてくる。

ともだちにシェアしよう!