118 / 132
少しの嫉妬
「おい!」
パシッ…
急に腕を掴まれて後ろに引っ張られ何か温かいものに包まれる。硬いけどどこか温もりがあって嫌じゃない。いつも感じてる暖かさだ…
「この通り、こいつは俺にしか触れないの?分かる?分かったら彼方に触れないで?」
「お前っ!彼方!こんなやつに近づいちゃ駄目だ!俺の可愛い弟を返せ」
「は?彼方は俺にしか触れないの!分かる?お前には触れないの」
「でも、俺はお前より彼方と長く一緒にいるんだよ!」
「え?…えっーと…歩叶君?落ち着いて」
「ほら!歩叶君落ち着いてだって!お前にはなんも言われてないよ?」
「俺は注意しなくてもちゃんと落ち着けるからって意味で言わなかったんだよ!お前みたいな猿とは違うんだよ」
「いい加減に…しろっ!」
歩叶君の胸元から離れて二人の頭を平手打ちする。すると二人は頭を抑えながらしゃがみだした。
「あ…れ?痛かったかな?手袋で少し衝撃が和らいだと思ったんだけど…」
「「関係ねーよ!!」」
「ごめんなさい…」
「あ…あの…」
完全に女子達の存在を忘れてた。みんな口をポカーンと開けて魂でも抜けているようだった。
「…二人って付き合ってるの…?」
「え?」
付き合ってるって言ったら拒絶されるだろうか…
「付き合ってるけど?だったら何?だから彼方に手出さないでくんない?」
「え?!ちょ…歩叶君?」
「…かわぁいいぃぃ!!!相手が彼方君ならしょうがないよね!うちら彼方君に勝てないもん!」
「…っ?」
予想していた反応と違いすぎる。もっとこう…なんていうか反対されて気持ち悪がられると思ったんだけど、凄く歓迎してくれて逆に反応に困る。隣では歩叶君が嬉しそうに微笑んでいて心が暖かくなって涙が出そうになる。
「良かったな…彼方」
「う…うん!」
「俺、訳あって今日からこのクラスに移動する事になったんだ、多分知ってると思うけど春咲歩叶だ…今日からよろしく」
「…えぇぇぇ!あ、あああ歩叶君がうちのクラスに!いゃぁぁぁぁ!無理無理無理!」
「ちょっ、落ち着けよ!」
歩叶君の突然の発言にクラスの女子と数名の男子が叫び始めた。そりゃあそうだろう…こんなイケメンが自分のクラスにくるんだから…モテるんだろうな…ちょっと妬ける…
「んじゃ、自己紹介も済んだし改めてよろしく」
そして新たな学校生活が始まった。
ともだちにシェアしよう!