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好きな人
好きな人…。その人は僕の幼馴染であり、初恋の人。精神科医でありながら軽度だけど女性恐怖症を持っている。でもどの人から見ても評価は高くて受診を頼んでくる人は多く、優しくて思いやりのある人。
「おまたせ朔也!」
「遅い…もう30分も経ってんだけど」
「ごめんって、彼方君の授業が少し長引いちゃってね遅れました…」
「そうか」
そう言って彼は僕の頭をクシャクシャにする。無意識にやっているんだろうけどこういう行動一つ一つが僕の心をかき乱す。
そう、好きな人というのは朔也。僕が好きで好きでどうしょうもなくて困ってるのに平気で心臓を破壊するような事をしてくるから本当にたちが悪いと思う。って言っても告白なんて一回もしたこと無いけど…
「で、なんの用なの?」
ここに来たは良いけど事前には何も知らされていない。いつもの事ですけどね。
「付き合って欲しいんだけど」
「…………えっ?」
「ほら、俺パーティに呼ばれてるんだけどスーツのサイズが合わなくて…」
一瞬でも期待してしまう僕が馬鹿だった。もちろん朔也から告白される訳なんてないのは分かってる。幼馴染で男で……。心が抉られていく感じがする。何年もこんな痛み味わって来たのに少しも慣れない。
「あ、あー…うん、いいよ!」
「どうした?なんか変だよ?」
「ううん、そんなこと無いよ!少し疲れただけ、早く行こうよ」
「体調悪くなったらすぐ言えよ?」
心配そうな眼差しでこっちを見てくる。
ほら、またこうやって優しくして来るから僕もこの気持ちが抑えられなくなる。好きって気持ちが溢れて溢れて、いつかうっかり行ってしまうんじゃないかって不安になる。
こんな恋しなきゃ良かったのにな……
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