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紳士
「ここ……」
連れて来られたのは高級イタリアンレストランで僕なんかが場違いのとこだった。僕の家もそれなりにお金持ちではあると思うけどパーティとかも全部すっぽかしてたし、イベントとかにも出たことないしマナーとかには全く縁なんてない。
「行かないの?」
「あっ…うん…行くけど…マナーとか知らないよ…?」
「大丈夫、個室予約しといたから」
こういう事をしてくれるから諦める事ができない。少し紳士で気がきく王子様のようなタイプ。いっそのこと告白して散々な振られ方でされたら諦められるのに、絶対に優しく振ってくれて…僕なんかの事を抱きしめてくれて、泣いたら頭を撫でてくれて…なんて妄想に浸ってしまう自分が嫌になる。
「うっそ…」
「早く食べないと冷めんぞ」
目の前に並べられたのはイタリアンレストランならではの彩りが良くハーブの効いた料理でパスタ、ピザ、スープなどのトマトをふんだんに使った料理が多かった。でも1つだけ疑問がある…
「見晴はトマト好きだっただろ?」
「う、うん…でも朔也はトマト嫌いなんじゃ…」
疑問というのは朔也はトマトが嫌いなはずなのに、これだけの量のトマト料理を注文しているということ。確かに僕は昔からトマトが大好きで良く食べていた。もちろん朔也もその事は知っている。が…嫌いなものを注文するだろうか?
「別に食えないわけじゃないし、克服にもなるだろ?いい年したやつが子供みたいにトマトを嫌ってるなんて恥ずかしいしな?」
そう言ってニコッと微笑んだ顔は妖艶でつい見とれてしまう。
「朔也も好きなの頼んでよ!せっかく個室にしてくれてこんなに頼んでくれたのに…一緒に好きなもの食べて楽しみたい」
「っ…見晴…あーー!もう分かったよ!頼めばいいんだろ?」
一瞬、朔也の顔が赤くなった気がした。その後は何故か急にワインを次々と頼んで無理やり飲むように口へと流していった。
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