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ありえない勘違い

「朔也…?」 目の前には朔也…いや、僕の知らない朔也がいた。今までのクールさの欠片も無く、ワインを片手に酔いつぶれてフラフラしている朔也。昔からワインやお酒を飲む事はよくあったけどここまでになるのは初めてなんじゃないか? 「美晴…うっ…気持ち悪い…家まで連れてって…」 会計を終わらせると気持ち悪いと訴え掛けてきた朔也の肩を支える。僕の方が身長が低いせいで傍から見たら絡まれたやつみたいに見えるだろう…もちろん好きな人がこれだけ近距離にいて冷静でいられるわけもなく、さっきから心臓は鳴りっぱなし。 適当にそこら辺にいたタクシーを捕まえて車に押し込んで行き先を告げる。乗車している間もなんだか訳の分からない事を呟いて僕に寄っかかってくる姿に少し嬉しさが込み上げた。いつもは朔也の方が余裕があって僕を引張ってくれるけどなんだか僕の方が少し余裕感があっていつもと違う感覚に胸を躍らせる。 「着いたよ」 少しして朔也の家に着き体を支え車から降ろす。逞しい体に比べて自分の弱々しい体に少々嫌気がさす。 「はい、お水飲んで」 「センキュー」 寝室で少しだるそうにしている朔也の背中をさする。 ドサッ… 「え?」 視界が一瞬で反転して気づいたら朔也に組み敷かれていた。唇と唇がくっつきそうな距離になり思考回路が停止する。 「ちょっ…まさか僕に吐くつもりじゃないよね?トイレ…行ってよ?」 自分がこんな状態になっていることを朔也が気持ち悪くなって嫌がらせとして僕に嘔吐するつもりなのだと必死に心を萎えさせる事を考える。 「……俺がこうなっている理由で思いつくのはそれだけ?」 「こ、これだけって?」 どういうことなのかさっぱり分からない。僕が朔也の立場だったらもちろん朔也の事が好きだからで…だけど朔也は僕なんて恋愛対象に入っていないはず。 「も、もしかして僕を殺そうと…してるとか?やめて…よ?さすがに医者がこんなことは…んっ…」 続きの言葉が出せなくなっている。出せなくなったのは僕のせいじゃなくて目の前のドアップの顔が僕との距離0cm…キスをされているからであって… 「んっ!朔也!酔い、すぎだよ?僕は朔也の彼女じゃないよ?ちゃんと見て!」 自分で言って自分の心が締め付けられる。でも彼女と勘違いするわけは無いはず…だって朔也は僕のせいで女性恐怖症になったんだから…

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