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第7話
『遅い!』
プゥーっと頬っぺたを膨らませた悠希が実家の玄関先で怒っていた。
『母さん、悠希なんで怒ってんの?』
『昨日ね、絵を描いててこれをパパに見せるんだー!って張り切っちゃって…でもパパ遅いよ?って言っても聞かなくてね。結局寝ちゃったんだけど、ずっと待ってたのよ。』
『そうか…悠希、ごめんな。』
『もう知らない!』
『そんなこと言わずにさ、絵見せてよ?』
『嫌だ!』
『パパ泣いちゃおうかな…』
俺はわざと手を目にあて、泣くフリをした。
『あっ!パパごめんなさい。泣かないで。』
俺の頭をヨシヨシと撫でる悠希が愛おしい。
『パパもごめんな。許してくれる?』
『うんっ!仲直りしよう!』
ギューっと俺にしがみつく悠希が可愛くて可愛くて仕方がない。
こういうときママがいるとまた違うのかな…なんて考えたりもするが、俺と悠希は二人だけの家族。
パパだけでも寂しくないと思わせないと…と思った。
『これ見て!』
元気よく差し出された絵には男の子が二人に大人の男が二人。
『これは誰?』
『これが悠希で、これがパパでしょー。これが冬馬くんで、これが冬馬くんのパパ!』
『へぇー。悠希、ほんとに冬馬くんと仲良いんだな〜。』
『うん!毎日遊んでるよ!』
『そうか。じゃぁ今度冬馬くんのパパに挨拶しないとな!』
『お家にも遊びに行ける?』
『それも聞いてみような。』
『うんっ!』
満面の笑みで悠希は頷いた。
『じゃ、母さんありがと!』
『はいはい、気をつけて帰るんだよ。悠希ちゃん、また来てね。』
『うんっ!おばぁちゃんバイバイ!』
母さんに手を振り、俺たちは家へと帰った。
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