4 / 5

第四夜

目隠しをされ、切なげな声を上げながら背中で戒められてる両手を擦り合わせる。 ベッドの上に一糸まとわぬ姿で蹲った義父(ヴォルフラム)は扉に背を向けているせいで、その双丘の狭間に筒状の淫具を咥え込んで秘部を忙しなくひくつかせている姿が全て丸見えになっていた。 義父をこの姿にした張本人だけは涼しげな顔をして主人を見つめている。 ディックも、信じられない光景に釘付けになっていた。 「昨夜から貴方をお迎えするために、あの状態でお待ちいたしておりました。先程たっぷりと媚薬を注いでおきましたので、そろそろ限界でしょう。見てお分かりでしょうが、旦那様は今、理性がかなり怪しい状態になってます。気が触れてしまう前に、貴方には旦那様を抱いて頂きます」 「あの人を、俺が…抱く?父親になる人を?」 どう考えたって正気じゃない。悪い冗談だろと視線で問えば、執事はその視線を跳ね返し、ベッドに近付いていく。 「旦那様、お待たせいたしました。ディック様がご到着なさいました」 「らん、てぃす…ぁあ、ランティスっ」 「分かっています。疼くのでしょう?直ぐ楽にして差し上げます」 言葉を聞き取れているのか怪しい義父の耳元で囁きながら、執事の視線はディックに注がれている。 「どうしました?早く服を脱いでこちらにきてください。貴方には旦那様の後継者として、色々と覚えていただかなくてはいけないことがあるんですから」 これは教育の一環ですと嘯きつつ、手招かれるままに近寄る。 執事の手によりあっという間に身ぐるみを剥がされ、気がついたらディックは義父の腰を掴み上げていた。 手に吸い付くようなきめ細やかな皮膚の感触に、図らずともゾクっと背筋が震える。 おそらくは拡張のために咥えされられていた淫具は執事が取り払った後だ。 義父の秘部が、眼下で誘うようにひくついている様に目眩を覚え、気がついた時にはディックは吸い寄せられるように己の屹立をそこに突き立てていた。 「んぁあああーーーっ!!」 嬉しそうな義父の悲鳴が耳を貫く。 「あぁ、ランティスっ!!は、早く突いてっ、奥を…いつものように、グリグリってしてくれっ」 自分は貴方の執事じゃないと心で叫ぶ。だがいくら言葉は通じそうにない義父にはこれが効果的だと思い直し、媚肉を思い切り突き上げる。 その所作に違和感を覚えたのか、義父がビクッと腰を跳ね上げた後、身体を硬直させた。 「…ち、がう。これは、ランティス、じゃない…?」 「ええ。残念ながら、私ではありません」 言いながら、執事が義父の目元を覆っていた目隠しを取り除く。恐る恐る肩越しに振り返った義父は、ディックを見るなり目を見開いた。 「え?あ、ああっ…な、んで父さんがっ!?」 驚きの中に喜びを感じているのが明らかだったが、錯覚させたままではこちらが哀れだと、ディックは心を鬼にして義父の言葉を否定する。 「違います。貴方の父親に似ているのかもしれませんけど…。俺はディックです」 「ディック…?」 「ええ、今日から貴方の息子になったディックです」 嗚呼そうだった今日は息子が来る日だーーと、唐突に思い出したらしい義父は、少しばかりまともに思考が働くようになったらしく、次の瞬間真っ青になった。 当然といえば当然だろう。 義理とはいえ、挨拶を交わすより早く体を繋げてしまっているのだから。 「大丈夫ですよ、旦那様。親子の形は色々。千差万別です。風変わりではありますが、こんな親子の始め方もいいのでは?相性も、悪くないようですし」 「俺も同感です。なので出来れば続きをしてもいいですか?」 ダメだと言われても止める自信はなかった。義父が出す答えが否であれなんであれ、無理やりにでも続けるつもりでいた。 義父はしばし悩んだそぶりを見せた後、諦めたように、それでいて吹っ切れたように自嘲の笑みを浮かべた。 「こんな浅ましい男が君の父で申し訳なく思う。だけどもう今更だな。隠し通してはおけない運命だったんだろう。私はーーー僕は実の父にこういう体に作り変えられた。男に抱かれなければ満足に寝ることも叶わない浅ましい体に。息子になれば、君にはきっと迷惑をかけるだろう。それでもよければ私を父として愛してくれ」 「愛します。貴方を。どんな形であれ貴方のそばに居られるなら俺は何でもいい。俺はもう貴方の虜だ」 男同士だとか、仮にも親子だとか諸々の葛藤などあっという間に投げ捨て全てを受け入れる覚悟をし、ディックは義父と誓いの口づけを交わす。 世間一般とは大きく一脱した関係を、ここから始めるための誓いだ。 「私もあなた方の親子の成長を、おそばで見守りましょう」 ようやく止まって居た時間が動き出しましたねと、嬉しそうに執事が零す声を、ヴォルフラムの嬌声が搔き消す。 戒められていた腕を解いてやり、義父を正面から抱き直す。 男にしては細い体をしっかりと抱きしめ、屹立を締め付ける絶妙な快感に酔いしれつつ、ディックはこの運命の巡り合わせに感謝した。

ともだちにシェアしよう!