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第5話

そんなこんなで急遽はじまった子育てに悪戦苦闘しながらも時は過ぎる。 ミルクと離乳食の時間や量などは母親がノートにメモしてありそれを参考に与えた。 オムツ交換など、りくとのお世話はみずきが行い、その間にアキラが食事の支度をしている。 「手伝おうか?」 夕飯の支度をしているアキラに声をかけるみずき。 「りくとは?」 「眠ったから」 「お前も疲れただろ、休んでたらいいから」 「いや、」 「大丈夫、できたら呼ぶから皿だけ運んで」 「あぁ、わかった」 みずきはソファで眠るりくとのそばに腰を下ろして様子を見る。 「うん、」 その様子を見送り調理に専念する。 しばらくして、夕食が完成する。 「みずきー、ん?あ、寝てる」 様子を見に行くと、ソファで眠るりくとのそばでみずきもソファにもたれ眠っていた。 「お疲れ様、やっぱ慣れない事すると疲れるよな」 そっと小声で囁く。 「てか本当、親子みたいだな」 くすっと微笑み、しばらくその様子を微笑ましく見つめる。 オレなんかと付き合ってたら、こういう未来さえも遠のいてしまうというのに… ばかだな、本当。 「みずき、」 そしてポツリと呼んでみる。 「ん…、あ、すまない!いつの間にか」 それに反応して目を覚まし慌てて謝る。 「大丈夫、なんかちょっと癒されたから」 「え?」 「ううん、りくと寝てる間にご飯たべよ」 「あぁ、運ぶの手伝うから」 「ありがと」 2人は手早く夕食を済ませて、洗い物はみずきが率先してやってくれているので、アキラは洗濯物を片付けながらりくとの様子をみていた。 「洗い物終わったから風呂沸かしてくるよ」 「ん、サンキュー、今日はこの子いるから一緒には入れないな」 いつも休日は一緒に入る習慣だったから。 「あぁ、りくとの風呂は俺が入れるよ」 「おー、やる気だな、早くも愛着わいた?」 「いや、りくとは可愛いけど、」 アキラの負担を軽くしてやりたいのが一番だったのだが。 「本当にパパになっちゃえば?」 するとまたアキラは茶化す。 「アキラ、俺はアキラ以外のひとを好きになる事はないから」 みずきはそっと囁きながら、頬に触れ、可愛い唇へ優しくキスを落とす。 「…はいはい、今はね」 アキラはみずきの想いから逃げるように着替えを取りに奥の部屋に行ってしまった。 「アキラ…」 アキラのことをずっと一途に想い続けてきた…けれど、アキラは…俺のことを対象として見てくれたことはない…一度も。 優しさで付き合ってくれているだけで… 悲しいけれど、完全な片想いだから。 いつか、本気で好きだと、愛していると言ってもらえるようになるまで、精一杯の愛情でアキラを振り向かせたい。 そう、心に想うみずき。

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