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第8話
アキラとりくと2人きりになるが、りくとはそのまま2時間ほど眠ってくれた。
その間に母親のノートやネットなどを見て子育てを勉強する。
そして、親が迎えに来た時のために、昨日の様子から今日の様子をノートにメモしておく。
りくとが起きてから、おもちゃなどで遊んでいたが、みずきがいないからかなかなか落ちつかない。
結構なスピードでハイハイするりくとについていきながら危険を回避するアキラ。
「ご飯用意しとけば良かったな」
目が離せないから、りくとのご飯の用意もできない。
「あ、これ使お」
思いついたのは玄関に置いてあるベビーカー。
これに乗せておけば安全だ。
ハイハイするりくとを何気なく床から抱き上げようとするアキラ。
しかし…
「痛ッ!ダメか…」
腕に負荷をかけ過ぎたためか、左腕が全体的に麻痺して引き攣り強烈な痛みが続く。
ゆっくり、りくとを下ろし、腕の麻痺が引くのを待とうとするが…
りくとは待ってくれない、そのままハイハイしてキッチンの方へ行こうとする。
「っ、待って」
咄嗟に自由の利く右手でりくとの服を掴んで止めるが…
「ふ、ぅわあぁぁん!」
それが嫌だったのか、りくとははじめて大泣きをはじめる。
「ッ、ごめんごめん、ちょっと待ってな」
左腕の痛みを堪えながらも、なんとかりくとをあやそうとするが…
りくとは本泣きに入り泣き止まない。
「よしよし、困ったな…ハァ」
おしゃぶりをくわえさせてもそのまま大泣き、腕の痛みも続いていて、すぐに抱き上げてあやすことも出来ずアキラは弱ってしまう。
しばらく盛大な泣き声をききながら、時が過ぎ、左腕の麻痺がようやく治る。
「そんなに泣くなよー」
アキラは泣いているりくとの背を押してソファまで連れて行き、ソファに掴まり立ちをさせて、そのままソファに押し上げる。
自分もソファに座って、りくとを抱き直し、ゆっくり立ち上がる。
「よしよし、暴れないでくれよ、落とさないよう必死なんだから」
床から直接持ち上げるのは無理だが、ソファからならなんとか抱っこできた。
とりあえずあやしながらベビーカーに乗せる。
しかしまだ泣き止まないりくと。
おもちゃなどであやしてみるがなかなか…
「お腹空いてるのかな」
とりあえず、りくとのご飯を作って与えてみる。作っている間にだいぶ本泣きはおさまってきたが、逆に眠そうだ。
なんとか半分くらい離乳食を食べさせて、そのまま、りくとは眠ってしまった。
「ふぅ、ハードだな」
一息ついて、ソファに座る。
余裕がなくて見れていなかった携帯電話を手にとってみる。
履歴は…
「ふ、みずき」
そこにはみずきが休憩中に送ったであろう短いメールが…
『アキラ、大丈夫か?』
なんとなく和むアキラ。
「ちょっとくじけそうかな」
疲れた思いからポツリと呟き、そう返信する。
みずきは仕事中なのですぐには返事は来ない。
元々、病気の影響で疲れやすいアキラ、腕の麻痺もあって体力を消耗したので眠気が襲ってくる。
「赤ちゃんの世話は、オレには難しいか…」
ポツリと呟いて、そのままうとうと眠ってしまう。
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