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喫茶店のオーナーと甘党の彼_2
大池が喫茶店へと来るようになったのは江藤の送別会の日の事だった。
滅多に飲み会に参加しない大池が居るだけでも江藤にとっては驚きだったが、
「あの、もしお時間が大丈夫でしたら、この後つきあってくれませんか?」
と誘われたのだ。
送別会が終われば大池とはこれっきりになるだろうとそう思っていたので、誘われた事がすごく嬉しくて何度もうなずいてしまった。
実は大池に恋愛感情をもっていた。
はじめの頃は仕事の話以外しない大池の事は後輩としか見ていなかった。
だが、真面目で仕事熱心なその姿にいつの間にか目が離せなくなり、そして気が付けば好きになっていたのだ。
もっと仲良くなりたくて仕事以外の事を話しかけたり飯を食いに行こうと誘ったりもしたがあまり良い反応はなく。
きっと仕事以外では付き合う気がないといいたいのだろうと江藤はそう思っていた。
それだけに最後の最後に巡ってきたこのチャンス、大池との関係がこれっきりにならないようにしたい。
黙って前を歩く大池について行った先にあったのは小さな焼き鳥屋さんで。それも行きつけ店らしく顔を見るなり女将さんが大池の下の名を呼んだ。
「あら、今日はお連れさんもいるのね」
「会社の先輩です」
カウンター席に座ると上着を脱ぎ、江藤にビールでいいかと聞いてくる。頷くと女将にビールを注文し、ほどなくして目の前に瓶ビールとコップが二つ置かれ大池がコップについでくれる。
大池が参加した数少ない飲み会でも酒を呑んでいる姿は今まで見たことはない。その飲みっぷりの良さから相当酒が好きな事が解る。
「てっきり酒は苦手なのかと思っていたぞ」
知っていれば飲みに誘ったのにと言えば、
「飲める事をあまり周りに知られたくないので」
とそういわれてしまった。要するに飲みに誘われたくないと言いたいのだろう。
大池の言葉に落ち込みそうになったが、それを振り払うように首を振り気合を入れなおす。
折角、二人の飲んでいるのだ。落ち込んでいる場合ではない。
「江藤先輩、何にしますか?」
目の前に置かれているメニューを指さし、どれにするかを尋ねてくる。
「そうだな、これにしようかな」
「解りました。女将これとこれを」
メニューを指さして注文を終え、江藤は大池に話しかけるが感心が無いのか会話はすぐに終わってしまう。
折角二人で飲んでいるのに気まずい空気が流れだし、どうして誘われたのかが解らなくなってきた。
「大池、なんか俺に用事でもあったのか?」
その言葉に大池は江藤を真っ直ぐに見つめたまま、何かを考えているようで、
「そういえば……」
と話し始めたのは仕事の事で。江藤から引き継いだ得意先の事だ。
最後だからと変わらない、なんとも大池らしいと思いながら酒を勧めつつ話を聞いた。
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