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喫茶店のオーナーと甘党の彼_6
その日は朝から冷たい雨が降り肌寒かった。
大池が店に来なくなって一週間。未だ連絡は一切ない。
今日もきっと来ないだろうと思いつつ、もしかしたらと期待も込めて店の鍵だけは開けておこうとドアの前に立ちカギをあける。
するとすりガラス越しに人影が見えて、咄嗟にドアを開けばそこに大池の姿がある。
「大池!」
江藤と顔を合わせるなり逃げるように雨の中に飛び出してしまう。
「待って!」
その後を追いかけようとした江藤だが、慌てていた事もありぬかるんだ場所に足を取られて転んでしまい、水たまりの中へと頭からつっこんでしまった。
かっこ悪い。
のろのろと身を起こし泥だらけになってしまったシャツにため息をついて。きっともう大池は居ないだろうと顔を上げれば。
「江藤先輩、大丈夫ですか?」
と、手を差し伸べる大池の姿がすぐ傍にある。
「大池」
泥だらけの手で掴むと引っ張ってくれて、起ちあがった江藤はそのまま喫茶店ではなく住居スペースのある二階へと大池を連れて行く。
部屋へ入ると大池にタオルを手渡し風呂へと行くように言うが俯いたまま動かない。
その顔を覗き込んでみれば、何か思いつめたような表情をしていて、江藤は大池の頬を手で包み込んで自分の方へ向かせた。
「どうした?」
と、目を見つめながら尋ねれば、ぐっと喉に何かが詰まったかのような表情をし、それから目を泳がる。
話すことを躊躇うような事なのか。それはきっと大池がここに来なかった理由だからだろう。
「大池、無理に話さなくていいよ。一先ず風呂に入って体を温めなって」
そう背中を押してバスルームへと連れて行く。
「後で着替えとか持っていくから」
とバスルームを出ようとしたところで大池の腕に引き止められた。
「俺、あの日からずっと考えていたんです」
「え?」
一体何を?
そう思いながら大池の言葉を待つ。
「江藤先輩に彼女がいて、祝福すべきことなのにこんなに嫌な気持ちになるんだろうって。それから同僚に彼女が江藤先輩の義理のお姉さんなんだと聞いて、ほっとしたのは何故だろうって」
真剣な眼差しを向け言うその言葉はまるで告白のよう。つい都合の良い事ばかりを考えてしまい、胸が高鳴りだす。
「江藤先輩に会えば答えがでるのではと思って店の前まで来たのですが……、いざとなると怖気ついてしまって」
そう言って俯く大池をそのまま抱きしめる。
「俺の勘違いじゃなかったら、それは俺が好きって事か?」
「……好き?」
その言葉を聞いてかたまってしまった大池の、その唇に江藤は口づけをする。
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