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喫茶店のオーナーと甘党の彼_8
【メロンパンとヤキモチを妬く彼】
果実入りのメロンクリームとホイップクリームをなかに詰めたメロンパン。
これは甘党である江藤の恋人である大池の為にと焼いたパンなのだが、学校帰りに喫茶店へ寄ると妹の瑞穂 から連絡を受け、彼女に連れられて一緒にやってくるだろう幼馴染であり友達のメイにも、手造りパンを食べさせてあげたいなと思い二人分のミニメロンパンを用意した。
瑞穂は江藤にとって自慢の妹である。シスコンだと思われても構わぬほど可愛いくてしかたがないし、メイの事も小さな時から本当の妹のように可愛がっていた。
「兄貴」
愛らしく微笑む短髪の少女が瑞穂、そして髪の長い美少女がメイだ。
「いらっしゃい。瑞穂、メイ」
二人が店に来るなり花が咲きほこったかのよう。男性客はその可愛さに鼻の下を伸ばし、女性客はほっこりとした表情を見せる。
そんな客たちを見て自慢げに頷くシスコンの江藤。
喫茶店の中が和やかな雰囲気に包まれた。
窓際の席に座った二人にカフェ・オレとミニメロンパンの入ったバスケットを置く。
「わぁ、美味しそう」
家族には大池の事を話してある。
自分の性癖を知っている家族は恋人が出来たことを喜んでくれた。
なので誰の為に作ったパンなのかはすぐにバレるわけで。
むふふふと口に手を当てて含み笑いをしつつ、「オアツイデスネ」とカタゴトで話す瑞穂の額を突く。
「もしかして噂の甘党の彼氏さん?」
瑞穂に既に大池の事は聞いていたのだろう。そう言うとメイが掌を合わせる。
「そうそう。兄貴が前に勤めていた会社の後輩クン」
瑞穂のスマホに何故か大池の写真があり、それも馴れ馴れしく大池の肩を組んで良い表情を浮かべる信崎まで写りこんでいた。
「な、信崎っ」
瑞穂からスマートフォンを奪い取りワナワナと肩を震わせる。
大池が信崎に強引に連れられ居酒屋に行ったのはつい一週間前の出来事で、途中で逃げてきたのだと江藤の家に来て話していた。
まさかその飲み会でこんな写真を撮っていたなんて!
「あの野郎……」
意地悪く笑う信崎を思い浮かべて瑞穂のスマートフォンを乱暴にテーブルの上へと置く。
「ちょと、兄貴!!」
肩を叩かれてハッとする。
「あぁ、ごめん」
壊れていない事を確認して瑞穂に手渡す。
「もうっ」
「瑞穂、許してよ、ね?」
両手をあわせてゴメンねと首を傾げれば、
「しょうがないな、許してあげる」
確かにこれは無いよねと信崎の写真を指でトンと叩き瑞穂が微笑んだ。
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