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喫茶店のオーナーと甘党の彼_16
時間があると真野は喫茶店へ顔を見せるようになった。
大池にバレると嫌な顔をされるらしく、ここに来るのは内緒らしい。
真野が来るようになってから菓子パンと調理パンの二種類用意するようになった。
「すごくふわふわで柔らかい白いパンですね。挟んであるピーナツ味のクリームもすごくおいしいです」
「店の常連さんの中に落花生を作ってる方がいてな」
はねだしだけど使ってよと譲り受けた落花生をピーナツバターにする。
それを生クリームと混ぜ合わせてパンにはさんだ。
「良い落花生だからな。毎年楽しみなんだよね」
それも今まで一人でしていた殻むきを大池と一緒にしたり、出来上がったピーナツバターを使って料理して大池に美味しいって言ってもらえたり。
思いだすとつい口元が緩んでしまう。そんな江藤に、
「料理上手な恋人さんがいる大池さんが羨ましいです」
とパンを一口食べて美味しいと顔を綻ばせる真野。
恋人だということをどうして知っているのだろうと驚いて思わず聞いてしまう。
「えぇ? 大池さんの態度を見ていたらわかりますって」
江藤さんだってわかりやすいですよと微笑む真野に、そうなのかとがっくりと肩を落とす。
「俺もお二人のように素敵な恋愛がしたいです」
「へぇ、真野、好きな奴でもいるのか」
と二人の会話に割り込んでくる、良く知ったその声の主にいらっしゃいと江藤が声を掛ける。
「よう」
軽く挨拶をすませ真野の隣へと腰を下ろせば、
「いけない、もう帰らないと」
と席を立ち、止める間もなく失礼しますと店を後にしてしまう。
あまりにあからさますぎる真野の態度に、信崎に何をやったんだよと尋ねる。
信崎は付き合いやすく面倒見も良い男だが、それがあだとなってうざがられてしまったのだろうか。
「アイツが入りたての頃にな、部下の一人が自分のミスを他人のせいにした事があってそれを叱ったんだけど、それが相当怖かったのかそれ以来あんな感じで」
「あぁ、その話は大池に聞いたぞ。ガツンと言ってやった信崎に胸がスッとしたって」
「はは。まぁ、そう思ってくれる奴ばかりじゃないって事だよ」
ま、しょうがないよと珈琲を口にする信崎に、
「よし、こういう時はとことん飲もう!」
と仕事が終わったら家に来るように言えば、いいねぇと誘いにのってくる。
「じゃぁ、大池にもメールしておくから」
「あぁ。仕事の帰りに酒は買ってくるから」
「頼んだ」
信崎の為に久しぶりに好物を作ってやろう。今は同僚でもない自分は友達としてそんな事しかしてやれないから。
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