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求愛される甘党の彼_6

 この日が来るのがどれだけ嫌だったか。  あっという間に約束の日となり、重い足取りで待ち合わせの場所へと向かう。  すると乃木の姿が既にあり、洒落た格好をした彼は一段と男前で女子の目を惹いていた。  声を掛けるのが嫌だなと少し遠くで見ていたら、こちらに気が付き近寄ってくる。 「百武君、来てくれてありがとう」  爽やかに笑いかけられ、眉をよせる。 「はぁ、どうも。で、どこいくんです?」 「映画を見て、夕食を食べよう」  と言われ、ホッと胸をなでおろす。  乃木の事だからとんでもない事を言いだすのではと、少し構えていたのだ。 「わかりました」 「行こうか」  乃木が前を歩きそれに着いていくかたちで映画館へと向かう。 「一応、デートなんだからさ」  隣を歩いてほしいと言われ、嫌だと首を横に振る。 「イケメンとは並んで歩かねぇって決めてるんで、お断りします」 「……何それ」  意味が解らないとぼやく乃木を無視し、百武は映画館に向かって歩いていく。 「で、何を見るんです?」 「今、話題やつ」  既にチケットも購入済みらしく、内ポケットから取り出して百武に見せる。 「映画、好きなんですか」 「うん、好きだよ」  口元を綻ばしながら熱く百武を見つめる乃木。その視線を遮る様に掌をかざす。 「そういうの、やめてくれませんかね」  そこまで自分は鈍くない。好意を持った眼で見ないでほしい。 「そういうのって、何?」  百武が想いに気が付いているのを解ったうえで言わせようとしているのが見え見えで。なので素直に言ってやる。 「乃木先生は無駄に顔が良いんですから、俺じゃなくて別の子にそういう顔したらいいんじゃねぇんですか」  自分に好意を持っても無駄。そう気持ちを込めて言う。 「君さ、馬鹿?」 「なッ」  躊躇う百武に、乃木は彼の両頬の肉を摘まんだ。 「ちょ、らにを」 「お仕置き」  そう、楽しそうに笑いながら摘まんだ頬の肉を動かして離した。  百武は頬を手の甲で擦りながら、同じ目線の相手を睨む。 「餓鬼じゃねぇんですから、こういう事するのやめてください」 「じゃぁ、解らせる為にキスをした方が良かった?」  それはそれで困るんじゃないの、と、人差し指が百武の唇を撫でる。 「なっ」  言葉を詰まらせる百武の肩を叩き、映画館の中へと入る。席は丁度見やすい位置だった。  はじまるとすぐに映画の世界観に引き込まれて夢中でスクリーンを眺めていた。  

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