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求愛される甘党の彼_8
「美味い」
あまりの美味さに目を見開き、乃木の方へと顔を向ければ、日本酒を飲みながら百武を愛おしそうに見つめていて、料理が喉に詰まってしまった。
「ごほっ」
「え、大丈夫、百武君っ」
お茶を掴み一口。落ち着いたところで彼を睨みつけた。
「見ないでください」
「ごめん、すごく美味しそうな顔してたから」
もう見ないよと、乃木も食事をしはじめて、百武は食事に集中することにした。
だがやっぱり美味い食事に口元が緩んでしまうのはとめられない。
そんな百武にくすくすと笑い声をあげる乃木に、
「俺じゃなくて、飯に集中してください」
そう顔を顰めれば、
「はいはい」
と乃木は食事を口にした。
最後のデザートは乃木の分までしっかりと頂いた。
「美味しかったです。ご馳走様でした」
「喜んで貰えてよかったよ」
「奢ってもらってばかりで悪いです」
「なんで? デートに誘ったのは俺だし。だから気にすることないよ」
「ですが」
「じゃぁ、お礼に……」
そういうと音をたて唇にキスをする。
「どさくさに紛れて、とんでもねぇですね」
唇を手の甲で拭うと、乃木の顔が苦笑いを浮かべる。
「なんかショックだな」
「普通に男とキスなんてありえねぇでしょうが」
「俺は君とならしたいよ」
「はぁ。しょうがねぇですね」
乃木の唇へと唇を押し付ける。
「百武君」
「お礼ですよ。じゃぁ、失礼しま……、なっ」
ぐいと肩を掴まれて、再び唇が触れる。そのまま舌を差し入れ歯列をなぞる。
「ん、んんッ、……はぁ」
散々、貪られて甘く痺れを残し唇が離れる。百武は頬を高揚させて上がった息を整えた。
濡れた唇を舐める姿は扇情的で。キスの余韻もあったか、ドキッと胸が高鳴る。
「やっぱ、男とキスなんてありえねぇです」
「そんな可愛い顔して言われてもねぇ」
頬を撫でられ、真っ直ぐに見つめられる。
「離してください」
乃木の手が触れている箇所が熱くてしかたがない。
「好きだ」
顔が近づき、今一度、唇が触れそうになり。
だが、その唇は重なり合うことは無く。百武がキスを拒むように手を差し込んだ。
「調子にのらねぇで下さい。お礼はもうしました」
「残念」
「……話、楽しみにしてますんで。では、失礼いたします」
はやくこの場から逃げ出した。
今は乃木の顔をまともに見ることができないから。
「またね、百武君」
引き止められることなく、すんなりと帰してもらえた。
「はぁ、油断ならねぇ」
胸が激しく波打つ。
はやくこの高鳴る鼓動を鎮めないといけない。でないと、乃木を担当の先生として見れなくなりそうだ。
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