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「一人だけ攫われて心配していたんだ、とにかく無事で良かったよ、君の話を聞くに替え玉だとも気づかれなかったようだしね、ところで奴らのアジトについて何か覚えていることはないかい、近くに何があったとか、海や川に近いとか」
『今日ここで見たことは忘れろ。一切誰にも口外するな』
「えーーーーーと。俺、行きも帰りも目隠しされてたんで、ほとんど何も見てないんで」
「相手の顔は? お面をとった素顔は見ていないかい?」
「見てないです」
「……うん、まぁ仕方ない、無傷で戻ってこれただけでも御の字だ、次のスケジュールもあるしね」
「は? 次のスケジュール?」
お風呂から上がったばっかの俺は俺んちの玄関に立つ真面目そうなおじさんに聞き返した。
「い、一日だけじゃなかったですっけ? 俺が佐藤のフリするの……」
「もちろん特別手当を上乗せして報酬は弾むよ?」
『次また会ったらブチ犯すからな』
にこやかなマイペースおじさんを前にして、俺は、気が付けば無意識に自分の片腕を掴んでいた。
立ち上がらせてもらったとき、緒方に掴まれたとこ。
掌の熱で軽く火傷したみたいにジンジンしていた。
いや、ジンジンしてるのは腕じゃなくて……は・ぁ・と……?
「んごおッ……んなわけあるかッ、お面の下すげー不細工かもしんねーし!」
「コーイチ君?」
「あーーーーー……」
また会ってみたい、なんて心のどっかで思ったり。
お面の下の素顔、見たい、知りたい。
あの低い声、もっと聞いてみたい……。
「んごおおお……ッッ」
「じゃあ詳細は後で連絡するからよろしく」
一人てんぱって、んごんごしてたら、勝手に契約延長して回れ右して帰っていったおじさん。
「まぁ、後一回だけなら、いっか」
「俺によっぽどブチ犯されてぇみたいだな、佐藤?」
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