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あ、やっぱそうだ、間違いない。 狐党リーダーの緒方だ。 顔はお面でわかんなくても、背格好とか髪とか、声でわかる。 緒方だぁぁぁぁあ。 「おおおお、緒方さ、うぇっ、ひっく」 「だせぇな。泣くんじゃねぇよ」 「うっ、だってぇっ、おぇっ、ひっく」 「アジトに拉致られたときはけろっとしてたんじゃねぇのか、てめぇ」 「け、けろけろ? だ、だって……あのおっさんキモくて……あれ、おっさんは?」 「殴って失神させてバスルームにぶちこんだ」 緒方、なんでここにいんの? もしかして、もしかしてだけど。 俺のこと助けにきてくれたとか? 「佐藤、いろいろ忘れたみてぇだな」 「え?」 緒方はソファでマジ泣きしている俺を狐面越しに見下ろした。 「前に俺に言ったよな、あの吐き気催すクソデブジジィをどうにかしてくれって」 「え?」 「もう〈小町〉は抜ける、小さじいっぱい入れて、なんて金輪際言いたくねぇって」 「え? え? え?」 ナレーション:そう、〈狐党〉緒方リーダーと〈帝国小町〉の佐藤、実は誰にも秘められたナイショのえろえろ情事オトモダチ、しっぽりあんあんな関係だったのだ! ホントのところ本物佐藤は入院なんかしていない、戦っているうちにどっちが本当の悪なのかわからなくなり、敵とこっそり情事オトモダチになるという迷走の果て、綺麗すっかり姿を晦ましてしまったのだ! 泣きながら、ぽっかーーーーん、している俺に緒方は言うのだ。 「せっかくのスイート、満喫しなきゃ損だよな、なぁ佐藤?」

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