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4-1 最終章
ナレーション:三大悪役の一つに名を上げる悪の組織<狐党>のリーダーに秘密の恋人発覚か!? 派手目立つ騒動を頻繁に起こしてはメディアに大々的に取り上げられている人気ヒールだが、深夜の路上にて熱々ハグを激写! 驚くべきことに御相手も狐面をつけており素性は不明、しかし紅一点なる狐党員である模様? うーん、まったくもって謎だらけ! 二人は路地裏の暗闇へ大胆に絡まり合うように消えていきましたとさ、コンコン!
「な、なんだよこれ」
休み時間、てきとーにスマホで流し読みしていたネットニュース。
そしたら「狐党リーダー闇夜の密会コンコン!」なんて見出しが飛び込んできた。
はー、どーせまたねつ造記事とかでしょ、なーんて思った、でも一応念のため読んでみた。
いや、どう見ても巽だ、これ。
な、なんか……露出度高いえっちな服着た、小柄だけど、えっちな体した女の子と……ぎゅーーーって……ぎゅーーーーって……!!!!
『奴隷じゃねぇよ、カノジョだろうが』
巽のカノジョって俺じゃなかったの?
「ふぇぇ……」
「うわ、コーイチが急に泣き出した」
「どした? お腹痛い? ホームシック?」
「おばけでも見た?」
「おばけ見てねーしホームシックでもねーわ!うるさいうるさいうるさい!散れ!」
クラスメートに一斉にからかわれてヒステリー起こしていたら、先生が教室にやってきて、授業が始まった。
集中できるわけがない。
まぁ、いつも居眠りしたり人物像にラクガキしてたりするけど、さ。
巽、え……えっちな感じの女の子と付き合ってんのかな。
俺、自分で気づかない内にポイされてたのかな。
「えろぎつね」
ついポロッと小声で悪態ついて、目の端っこに溜まった涙をゴシゴシ拭った……。
「見つけた、コーイチ君」
午後の休み時間、六限目の授業がある視聴覚室へ向かっていたとき。
渡り廊下で、周りの生徒と同じく、俺はその場でピシリとかたまった。
目の前には紛れもない〈帝国小町〉の佐藤ヒロインがいた。
和服とメイド服がコラボしたみたいな、黒白ボーダーのニーソで絶対領域まばゆい激ミニ衣装のコスプレを着こなした、どきどきらぶらぶガールズ戦隊の正統なるメンバー。
え?
だって、佐藤って、トンズラしたんじゃねーの?
だから俺が替え玉にされたんじゃーー
真正面からふわりと抱きしめられた。
我に返った周りの生徒が必死こいてスマホで激写する中、まだカチンコチンかたまったままでいたら、こっそり耳打ちされた。
「私の代役お疲れさま」
「え……」
「戻ってきたの、私」
「あ……」
「だから」
あの狐、私に返してくれる?
「あ」
写真の中で巽とハグしてた秘密の恋人。
あれは、本物の、この佐藤……。
「俺のモンに馴れ馴れしいんだよ、てめぇ」
いきなり耳元でオラオラボイスが聞こえたかと思えば。
今度は後ろからどえらく乱暴に抱き寄せられた。
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