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「だってさ、なんか海里 、やけに冷静だし。それに海里はやさしいから、女に泣いて頼まれたら押し切られちゃいそうなんすもん」
「陸斗 、子供の前」
「そんなの、どうでも良いっす」
冷静さを失っている上に苛立っている中、口を開けばどうなるか。
口から出てくる言葉は、自然、棘を含んだものになる。
そこまで怒っているワケでもないし、流石に「裏切られた」とまでは感じていないから、「浮気者!」と罵ることはしないまでも、つい海里が他の人間と肉体関係にあった事をほのめかす様な言い方もしてしまって。
それは世間的には、子供の前で聞かせる話ではないのだろう。
聡い子なら、今の陸斗の言葉で「同情で押し切られた結果生まれてしまった子供」だと思ってしまうかもしれないし、そこまで思わずとも「愛されて生まれたワケじゃない」というのはおぼろげながら感じてしまうかもしれない。
だから、自分の不貞を疑われた事より、そっちを海里が1番に責めたのは、間違っていないのだろう。陸斗の性格や、陸斗の気持ちを別にすれば。
「じゃあ、押し切られて寝たんじゃないなら、知り合いの女に頼まれた? 彼氏との間にできちゃったけど、親に怒られたの。男に捨てられそうなの。だから何とかしてほしいー、って」
「いい加減にしろって」
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