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ただ、今は陸斗 の方も海里 を信じたいのに信じられないような、「もしかして」といった気持ちがどうにも振り払えない状態だ。海里本人から「オレの子じゃない」と言ってもらえたところで、「はい、そうですか」なんて簡単に引き下がれない。人間の嫌な部分なのか、陸斗自身の性格か、それだけ陸斗に余裕がないのか。それとも、その全部か。
渦巻く不安や不満は顔にありありと出ていたのかもしれない。
「押し切られたりしねぇって。いくらオレがお人よしでも、そこまでじゃねぇよ」
陸斗が不満を言葉にするより先に、海里は切り出して、言葉を続けた。
「それに、さ。仮に、仮にだぞ? オレの子供だったり、この子へお前へのメッセージを託した女がいるなら、この子も母親の名前を言うだろうし、オレかお前のことを父親だって言うもんじゃないか? 本人に聞いたけど、両親のことは一切分からないんだと」
そういえば、お世話になります、なんて言葉は口にしていたけれど、陸斗や海里を見て「お父さん」とは言わなかった気がする。ドラマや小説じゃ、突然現れた子供が言う、お約束なのに。
現実とドラマを一緒にするのは危険かもしれないけど、今はどちらかと言うとドラマに近い状態だから、多少は参考にしても良いだろう。
とは言っても、すんなり信じるには、まだ少し足りない。
海里の口から、海里の声で、もう1度聞きたい。
じと、っと、細目で海里を見つめる。
「……信じていいっすか?」
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