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そもそも、突然家の前に現れた子供に、ああも気を遣える海里 の気持ちが、陸斗 には分からない。
恋人同士で深い付き合いとは言っても、しょせんは他人同士。どんな子供だったかも、よく知らない者同士。陸斗は海里を尊重していたし、海里の考えに驚く事があっても、頭から否定する事や、まるで理解出来ない事なんてなかった。
でも、空斗 への接し方は。
恋人を盗られたという嫉妬や苛立ちを別にしても、陸斗にはまるで理解出来なかった。
だって世の中には、自分の子供を見ても「父親」になれなくて、いつまで経っても「恋人気分」な男がいるっていうのに。
自分の子供じゃない上に、ましてやまだまだ遊び足りない大学生。それが急に子供がやってきたからと、ああも「親」「保護者」めいた事が出来るだろうか。
スキンシップに関しては、ちょっと敏感になりすぎだし。
海里のそれを母性、あるいは父性と呼ぶなら、それはどこから来るんだろう。
「そもそもオレに父性があるなんて思わないっすけど」
1人天井を見上げながら呟いて、自分の家はどうだったか考える。考えて、すぐに止めた。
今まで何にも興味が無かった。それは自分の家族に対しても同じだったから。興味を向けたのも、愛を捧げたいと思ったのも、感情を動かされるのも、全部海里に対してだけ。
そんな自分が思い返してみたって、参考になる思い出がヒットするはずもない。
「……遊びに行こ」
考えたってラチがあかない。家にいたって面白くない。
海里と話していても、今は空斗につきっきりだ。イライラする。
こんな時は外に出て遊ぶに限るだろう。
幸い、海里のおかげもあって、大学に入ってからはそれなりに友人付き合いをするようになった。
目についた名前にまずは連絡。上手い具合に今からあいていると返ってきたから、陸斗は慌てて起き上がり、身支度を整えて。
空斗と何かをしている海里には、声を掛けずに外へ出た。
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