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幸せでいたいだけ
「……倦怠期?」
ちょこん、と可愛らしく首を傾げて告げられた言葉に、「そんなんじゃないっす!!」と叫ばなかった自分を褒めたい。
とは言え、陸斗 が叫ばなかったのは自制出来たからではなくて、倦怠期の方がまだマシだったかもしれないという強い思いからなのだけれど。
「つーか、まだそっちの方がマシな気がするっす」
叫ばない代わりに力なく呟けば、友人の柚陽 は更に首を傾げた。
童顔の上、海里 以上に小柄だから、こういう姿はサマになってしまう。多分、陸斗が女をうざったいと思っている事を抜きにしても、そんじょそこらの女子よりは似合ってるんじゃないだろうか。
ちょっと天然が過ぎるところは、少し疲れるけれど、今となってはそんな部分も気にならない。
それどころか、
「え? でも、最近海里くんとの会話が少なくなって、スキンシップも減ったんだよね? それは、オレ、倦怠期だと思うんだけど……。でもちょっと早いか。3年経ってたっけ?」
普段なら少しイラっとしてしまう、言葉を言葉のままに取る柚陽の天然振りに、「ああ確かにあの説明じゃそう思われても仕方ないかな」と自分の非を認められる程で。
ガキが近くにいなくて、自分の話をゆっくり聞いてくれる。親しい人間同士の会話ができる。そんな時間を求めていた陸斗としては、柚陽の対応に感謝さえしていた。
だから、まあ、柚陽のド天然振りは、この際大目に見よう。迷惑料とか、感謝料とか、そういうやつ。
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