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 正直なところ、素直に全て打ち明けるべきか、陸斗(りくと)は悩んだ。  あくまで陸斗と海里(かいり)の問題であるし、陸斗の性格が悪い事も海里がやさしい事も有名だ。柚陽(ゆずひ)は良くも悪くもまっすぐな人間だから、遠慮なしに「りっくん、女の子から恨みを買ったんでしょ」「海里くんはやさしいからね」なんて言いかねない。そこに悪意がないからまた厄介だし、さすがに今それを言われたら怒るというより、ショックを受けて立ち直れなくなりそうだ。  でも。  最近海里と話していないし、“そーいうコト”もご無沙汰、キスやハグさえできやしないとグチった結果が「……倦怠期?」だったんだから、ある程度本当の事を言わないと陸斗の気持ちも通じないかもしれないしと、結局陸斗は空斗(そらと)の話をする事に決めた。 「家の前にガキがいたんすよ。オレの子じゃない。どっかの女がオレを恨んで押し付けたって可能性は、まあ、否定できないけど。でも女からそれらしい恨み言はなかったから、多分違うっす。縁なんて全くないガキの筈なのに、それ以来、海里はガキにべったりなんす。オレは放っておいて、なんでもガキ優先。食事も、寝るのも、とにかくオレは二の次三の次。下手したらオレの食事とか出てこねぇし。ガキが来てからオレ達の生活は台無しっす。……つーかあんな献身的になれるって、マジで海里の子なんすかねぇ」  誰かにグチを聞いてもらいたかったのかもしれない。言い切って大きく息を吐き出してから、陸斗は思った。  だって、言おうか迷っていたのが嘘のように、ぺらぺらと言葉が出てきたんだから。  さも自分だけが被害者であるように語っている自覚は、なかった。海里が空斗にべったりなのも、空斗を優先して陸斗の手を跳ねのけたのも、陸斗が好む食事を出さなくなったのも、全部本当の事だ。  でも、そんな話し方をすれば柚陽が陸斗を責めはしないというのは、どこかで分かっていたかもしれない。 「それは、りっくん、大変だね」  天然で、良くも悪くも、物事を真っ直ぐに受け止める柚陽は。  まさか陸斗が、無意識か意識的にかは別にしても、「自分だけが被害者だ」といった言い方を“選んだ”とは思いもせずに、陸斗が望む慰めの言葉をくれるんだから。

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