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「……りっくん。辛かったんだね。りっくんは頑張ったよ。じゃあ、今日は気を紛らわせるくらい、いっぱい遊んじゃおうか! それにオレの家に泊まって良いよ! 辛いなら無理に帰ることもない。きっと海里 くんだって、分かってくれると思う」
最初、柚陽 の声に、驚きが含まれていた。
それもそうだろうと陸斗 は思う。なんせ、海里がいなければ、常に真顔で表情を変えないのが陸斗という人間なのだ。笑う事もなかったのに、そんな男が急に涙をこぼせば、いくらド天然の柚陽だって驚きもする。
ただ、そこをからかうのではなく、やさしく慰めて。陸斗の気分を明るくしようと柚陽なりに考えてくれているのだろう、明るい声で遊びの誘いをしてくれるのは、今の陸斗にとってありがたかった。泊めてくれるというのも、ありがたい。
別にネカフェなり、適当なホテルなりで泊まるだけの資金はあるけれど、これだけ柚陽にやさしくされてしまっては、また1人ぼっちというのは、堪えるものがある。
零れた涙を手の甲でぬぐって、どうしたって感じてしまう照れは、えへへ、お世辞にも上手いとは言えない照れ隠しで誤魔化した。
「じゃあ、柚陽に甘えちゃおうかな。オレ最近、遊んでないし、話してもいないから、はっちゃけちゃうかもしれないっすよ? 連れまわしちゃうから、疲れたら言ってね!」
「うん! すっごくすっごく楽しもう! オレもりっくんに付き合うよー」
そうと決まれば早速と、伝票を持って立ち上がる。
喫茶店に入ってきた時より遥かに、陸斗の心は晴れて、笑顔さえ浮かんでいた。
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