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 ぱっこーん、と。  小気味良い音を立てて、並んだピンを全部跳ね飛ばした。よっしゃ、と思わずベタベタだけどガッツポーズ。  フォームも我ながら完璧で、左右のレーンから視線さえ感じるほど華麗なストライクを決めた陸斗(りくと)の背中に、ぱちぱちと拍手の音が届いた。  振り返れば、ベンチに腰掛けた柚陽(ゆずひ)が手を叩いてくれている。そのはしゃぎっぷりといったら、ストライクを出した陸斗以上だし、小柄・童顔といったのも加わって、小さな子供みたいにも見えた。  陸斗と同い年で、大学生のはずなんだけど。  ちょっと照れくささと、そんな風にはしゃいでもらえる嬉しさで思わず頬を緩めながら、ベンチの方へと戻る。  ストライクを出した時のお約束、ハイタッチを求めて挙げられた柚陽の手に、自分の手を重ねる。接触とも言えないふれあいだけど、手の温度を感じるのはハイタッチごときじゃ本当に一瞬だけど、その一瞬でさえ陸斗の心を明るくするには十分だ。  伸ばした手を振り払われない。それどころか、陸斗とスキンシップを取ろうと向こうから差し出してくれる。  ちょっと運動は苦手で。なんて苦笑しただけあって、柚陽のスコアは伸び悩んでいたけど、それでも陸斗と一緒に楽しんでくれているのは、ありがたかった。  そうだ。オレはこういう事がしたいだけなんすよ。  一緒にはしゃいで、一緒に笑って。ただ、幸せになりたいだけ。  ガキに振り回されて、ガキが生活の主軸になって、そんな生活なんてごめんだった。 「りっくんが楽しそうで、オレも嬉しい!」  ボウリングを終えてもまだ、陸斗の頬は緩んでいたんだろう。  柚陽は嬉しそうに笑って、いつのまに買ってくれていたのか、陸斗が好んでいる炭酸飲料のボトルを差し出してくれた。  少し辛口で、すっきりとするソレが陸斗は好きなんだけど、空斗(そらと)のせいで消えたものの1つでもある。「空斗が間違えて飲んだら、さすがに大変だろ」と言って、頼んでも買ってくれなかった・買う事を許してくれなかった好物を、柚陽は何も言わなかったのに差し出してくれた。  嬉しくて、胸の中があたたかさで満たされていくのを、陸斗は自覚した。

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