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思わず、聞いていた。
特にここ最近では、陸斗 を心から心配してくれていた海里 の関心は、空斗 に向いている。他人からの心配なんて鬱陶しいと思っているような陸斗を、本当に心配してくれる友人は少ない。
大学生になってから少しは友人付き合いをするようになったとはいえ、まだまだ初心者。そのあたりは上手くいっていない。
別に、他人から心配なんてされたくないっすけど。
それは、陸斗の本音だ。
だから他の友人が変に気を遣ってこないのは、願ったり叶ったり。
それでも、陸斗の気持ちは別として、海里の関心が陸斗から逸れた今、陸斗は自分が「心配される」という言葉から、1番縁遠いと言っても過言じゃないと思ってさえいたから。いや、そんな事さえ思わない程に、「心配」というものは、海里の関心が消えたと同時に、陸斗の頭からも抜け落ちていた。
だから、柚陽 がやさしいのは分かっているけど、咄嗟に聞かずにいられなかった。
ド天然で、凄くやさしい柚陽も、その言葉には思うものがあったのか、ぷう、と頬が膨らむ。柚陽のこんな仕草を見るのは、初めてかもしれない。本人は「怒ってるんだよー!」とアピールしたいのかもしれないけど、凄く可愛い。
可愛らしい方面に顔が整っていて、童顔だから、サマになってる。
「当たり前でしょ? りっくん、元気ないし、大変だって話も聞いたばかりだから心配するよ!! それに、りっくんは大事な友達なんだから」
「ありがと。心配かけてごめんね。でも大丈夫。ちょっと海里のこと思い出したらムカッときただけで、オレは柚陽のおかげでとっても元気っすよー」
「本当? オレがりっくんに元気をあげられているなら、嬉しいな!」
「ほんとっす」
頬を膨らませるのはやめて、ぱあっと笑った柚陽の頭をやさしく撫でる。
柚陽の性格を表した様にふわふわとした髪質は、撫でていて気持ちよかった。撫でられている柚陽も心地良いのか、うっとりと目を細める姿も、とても可愛い。
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