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思わず頬にキスしていたのは、柚陽 が可愛かったからだと思う。
もちろん、可愛らしい方向に整った顔の上童顔、という、もともとの顔立ちによるアドバンテージはあるんだろうけど。でも、やっぱり何より、ころころ変わる表情とか、心配して見つめてくれるトコとか、一緒に楽しんださっきのボウリングとか。何よりその全部に自分がかかわっているんだ。自分のことで柚陽は表情を変えてくれる。楽しんでくれているんだ。そう思ったら嬉しくて。
頬で済んだのは、そんな風に自分の中、柚陽への気持ちで溢れながらも、ここが外で、柚陽の家へ向かっている途中だという、常識的な理性が陸斗 にストップを掛けていたからだろう。
ここが人目の無い場所だったら、唇にしていた可能性は高いし、下手したら舌だって……。
そこまで考えてしまうと、随分ご無沙汰である事、その原因も思い出して、またイライラしそうだったから、陸斗は強引に思考を打ち切った。
と言うか、想像の中だけの人間より、今は柚陽の反応が気になったというのも大きい。
思わずキスしてしまったけど、男同士だし、柚陽は嫌だったんじゃ。
柚陽のやさしさをアダで返したくはなくて、慌てて柚陽を見つめる。平謝りするための言葉は、もう、喉から出かかっていた。
出かかっていたけど、出る事はなかった。
「りっくんにホッペちゅーされちゃった!」
柚陽は嫌がる様子も見せず、それどころか小さな子供のように、はしゃいでいたんだから。
つーか「ほっぺちゅー」ってなんすか。小学生っすか。同い年なのに、可愛いな、コイツ。
頭を抱えてその場でうずくまってしまいそうな程の感情を、胸の内で爆発させながら、陸斗は気が付いた。そんな無邪気にはしゃぐ柚陽の頬が、いつもより赤いことに。
これ、ちょっと期待しても良いんすかね?
何をだよ!自分の思考にツッコミながらも、陸斗は柚陽の頭をやさしく撫でる。
「そんな嬉しいなら、いくらでもするっすよ?」
冗談めかして、そんな風に付け加えて。
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