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「もう。りっくん、恥ずかしいんだから」
柚陽 の顔が、ますます赤くなってた。「恥ずかしい」って言いながら、どこか声が弾んでる気がする。さすがにそんな風に思ったら、自惚れかな。
柚陽の照れが映った気がして、陸斗 も照れくさくて、頬を掻いた。考えてみたら柚陽はド天然で、すっごく素直。陸斗の言葉を、冗談じゃなくて本気にとった可能性は高い。
高いし、冗談半分っていうのは、半分が本気だったっていうコトで。
ああ、もう!久し振りに甘い空気を感じてしまって、それが余計に照れくさくて、陸斗は気を紛らわせるように、「そうそう!」あえて、すっとんきょうとも言えるような声を出した。
「晩ご飯はどっしよっか? なにか買ってく? 確かこの辺だとバーガーショップや弁当屋もあったよね」
「うん。あと、家に着くまでに喫茶店があるから、軽食も買えるよ。サンドイッチとか、ホットドッグとか! でも、りっくんがお弁当食べたいとか、ハンバーガー食べたいとかじゃないなら、オレ、ご飯作るよ?」
「え?」
……え??
多分、陸斗は目を白黒させていたと思う。
人間信じられない事が起こると、本当にそんな反応をしてしまうらしい。「え?」の形に口を開けたまま、ぼーぜんとしてる。
そんな陸斗の反応を、言葉通りに受け取る柚陽がどう思うかと言えば。
「やっぱり嫌だよね。ごめんね! えっと、どこにしよっか? 少し遠回りになっちゃうけど、牛丼チェーン店もあったし。朝ご飯はおいしいパン屋さんがあるの」
「いやいやいや!! 嫌じゃないっすよ!! ちっとも嫌じゃないっす!」
確実に誤解されてしまうと思ったし、やっぱり誤解されてしまった。陸斗は慌てて否定する。勢いが良すぎて、「逆に怪しい」と思われそうだけど、柚陽は素直だから通じるはず。
実際、陸斗が必死にした否定は、柚陽にきちんと通じてくれた。
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