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2人でカレーを作るための材料を見てまわる。「これも良い」「これを入れたらもっと美味しいかも」「どうせなら、うんと辛口にしよう」そんな事を言い合いながら、スーパーを歩く。同棲中のカップルっていったら、きっとこれが普通だ。
カートの上に置かれたカゴには、スパイスがいくつか入っていて、肉はガッツリとしたもの。野菜は定番のニンジンと玉ねぎは選んだけど、少し控えめ。りんごもハチミツも入っていないカレーっていうのは、今まで当たり前に食べていたけど嬉しくて、つい店内を歩く足取りまで弾んでしまいそうだった。
もう、子供向けの味付けは、こりごりだったから。
「あ! そうだ、折角だからデザートも買っちゃう? プリンとか、ケーキとか!」
「いいっすね! いくつか買ってシェアするのも良いかも!」
洋菓子コーナーに近付いた時、弾んだ声で切り出された柚陽 の提案には、即座にノッた。甘い物が好きらしい柚陽は、きらきらと目を輝かせて、プリンに、エクレアにとカゴへ入れていく。
陸斗 も、いちごプリンやチョコレートケーキをカゴに入れた。甘い物が好きな様子だけど、甘い物なら全部好きかは分からない。「これ、好き?」と柚陽に確認をしながら。
カゴの中は、肉やデザートで結構いっぱいになっていたけど、まだまだ食べ盛り。食べきれないって事はないだろう。柚陽は小柄だけど、それなりに食べる方なのは知ってる。学食の大盛りくらいは余裕で。
今は「栄養バランスを考えろよ」とも、「空斗 が真似するだろ」「オレ等だけで食ったら空斗に悪いだろ」とも言われない。
ただ、好きな物をカゴいっぱいに満たす。そんな、大学生という年頃特有の贅沢を満喫しても良いだろ。
それも、隣には、花が咲いた様な笑顔がある。
陸斗はそうした幸せを望んだだけなのだ。海斗なんて不純物でしかないし、ソレに毒されて、陸斗ではなく海斗を選んだ海里 も、「もういらない」と完全に切り捨てる事は出来ないけど、同罪だと思ってる。
……考えるのは、やめよ。
どうしてもふとした弾みで、思い出してムカついてしまうから、また、思考を強引に打ち切った。折角柚陽と一緒に幸せな時間を過ごしてるんだから、わざわざイライラする事ないし。
「酒も買っちゃおうか?」
「うん! お酒も買おう!」
陸斗の自由と幸せを邪魔する、空斗と海里は、今、ここには、いないんだから。
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