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「柚陽 、料理が上手かったんすね。初めて知ったっす」
「えへへ、りっくんに喜んでもらえたなら嬉しいよ」
柚陽が作ってくれたカレーは、陸斗 のリクエスト通りスパイスがよく効いていて、美味しかった。食べている途中で、じわっと汗がにじむほどの辛さは本当に久し振りで、心地良い。そう。カレーといったらコレを求めてたんすよ。
余ったら明日に取っておけるしと、柚陽は少し多めに作った様だったけど、2人で完食してしまった。もちろん、別腹というか、それでもデザートを入れるだけのスペースは残っている。
食べ盛りだし、美味しい物って、結構パクパク食べられてしまうのだ。
「柚陽、イチゴプリンも食うっしょ?」
「うん、食べる」
デザートもいくつか食べ進めて、陸斗はイチゴプリンを手に取り柚陽に訊ねる。きらきらと輝く笑顔に、良いお返事。別に陸斗が作ったワケじゃないし、市販品を買ってきただけなんだけど、それでも自分の提案にこうも喜んでもらえるのは、素直に嬉しい。
とはいえ。
陸斗は一瞬だけ迷った。1袋に何個か入っているエクレアや、2個入を買ったケーキと違って、1つのプリンをシェアするのは少し難しい。先に半分食べてもらうか、半分食べてから渡すか。
それとも。
プリンのシェア方法を一瞬だけ考えて、陸斗は結局最後に思い付いた方法を選ぶ事にした。
今まではよくやっていて、最近ではすっかりやらなくなった方法。
「あーんして?」
柚陽が食べやすいサイズ分をスプーンにすくって、口元に近付ければ、柚陽の頬が少し赤く染まった。それから開かれた小さな口に、ピンク色したプリンが消える。ちらっと、プリンの色とは違う、舌の色が覗いて、ますますドキドキしてしまった。
違う。
ドキドキを自覚した時には、もう、動いた後だった。
手に持っていた筈のプリン容器はテーブルの上。さっきまでプリンを持っていた手は、やわらかくてあたたかい、柚陽の頬に添えられていて。
久し振りのキスは、やけに甘ったるかった。
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