38 / 538
恋人って、こういうコト
いつもとマットの硬さが違う気がする。それになんとなくだけど、あったかい。布団のあたたかさとか、気温の問題とかじゃなくて、なんか、もっと、こう。
不思議に思いながら、でもそこに不快感とかは一切なくて、幸せっすねぇ、そんな風にさえ思いながら、陸斗 はゆっくりと目を開けた。
視界に、ふわふわの髪が映った。それから幸せそうにすやすや眠る、あどけない顔。
まだ眠いのか、夢の中から帰ってくる気配はない柚陽 だ。
陸斗の腕の中、すやすやと安心しきって眠る姿は、とても可愛い。幼い顔立ちというのもあって、寝ぼけ眼では本当に小さな子供と見間違えてしまいそうだけど、本物のガキとは違って遥かに可愛い。
つーかあんなのと一緒にしたら、柚陽に失礼っすね。
元から無関心だった子供が、空斗 のせいで今や大嫌いだった。気持ち悪い。誰かに聞かれれば怒られそうだけど、今はそんな陸斗を叱る誰かはいない。柚陽なら「りっくんは辛かったんだもん。それくらい言って良いよ?」って励ましてくれそうだし、「今までガマンしててりっくんは偉いね」って褒めてくれそうでさえある。
起こさないように気を付けて、柚陽の頭をそっと撫でる。
ふわふわの髪の毛が心地良い。眠っていても心地良さは感じるのか、柚陽が頬を緩めたのを見て、陸斗の頬も緩む。
時刻は朝の8時になろうとしてた。柚陽の家から大学はそんなに遠くないし、今日は1限も出なくて大丈夫だ。昨日は疲れただろうし、もう少し寝かせてあげよう。
「それで朝ご飯は一緒にパン屋さん行って、大学にも一緒に行こうね、柚陽」
朝、誰かに対してこんな穏やかな言葉を掛けられる。腕の中には心地良さそうに眠る柚陽がいる。愛おしいって、こういう事を言うのかもしれない。
昨日と今までを思い出しながら、陸斗はぼんやり考えて、また、幸せだなぁ、頬を緩めた。
ともだちにシェアしよう!