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とは言え残念ながらというか、なんと言うか、体を重ねるまでには至れなかったんだけど。
甘い味がしたキス。思わず吸い寄せられた風呂上がりの柚陽 のうなじ。シャンプーとか同じのを使ったから、同じ匂いがしてるんだっていう、興奮。
そんな諸々があったけど、結局は何度かキスを交わして、最終的にお互い疲れていたのもあって、文字通りの“抱き合ったまま”ぐっすりだった。
ちょっとボウリングで、はしゃぎすぎたっすねぇ。柚陽はその後でご飯も作ってくれたんだし。
久し振りに手に入れた自由。好きに遊べるという事でテンションが上がって、ちょっと体力の分配を間違えた。これじゃ自身が嫌悪するガキと変わらない。
思わず苦笑いも漏れてしまうけど、これはこれで良いのかもしれないと思った。なんせ随分とご無沙汰だから上手くいくかなんて恥ずかしながら自信がないし、余裕もない。
柚陽は小柄だから、そんな状態じゃ本当に“抱き潰して”しまいかねなかったし。
こんな状況になるとは思わなくて。ただグチれれば良いと思っていて。それは言い訳だけど、今度からは気を付けておかないと。
それと、そんな問題を抜きにしても、純粋にこれはこれで良いと思っていた。
誰かの体温がそこにある。可愛いと思った人を腕に抱いて、朝を迎えられる。最近じゃありえなかった恋人の様な時間。
それは体の交わりがなくても、幸せだと思えた。まあ、もちろん、完全になくて良いと言える様な年じゃないんだけどさ。
幸せそうに眠る柚陽を見つめて、陸斗 は微笑み、「愛おしい」。その気持ちを込めて、そっと柚陽の額にキスをした。
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