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「およ? 珍しーじゃん」
「マジだ!! え、明日地球滅びんの?」
「槍降るぞ、槍!!」
教室に入るなり聞こえてきた声に、陸斗 の顔は反射的にしかめられる。相変わらずうるさいっすねぇ。そんな苛立ちを感じたし、事実声に出ていたと思う。陸斗を見るなり「珍しい」と騒いでいた人間が、「やっぱ陸斗は陸斗だったか」なんて納得してるから。
ただ、あまりにイライラして、咄嗟にそう返してしまったけど、珍しいと騒ぎたくなる気持ちは、分からないでもない。
なんせ、陸斗と言えば、海里 にしか興味がない事で有名なのだ。海里がいればそれなりに友人付き合いもするけど、海里がいなければ何もしない。そんな人間が、柚陽 と仲良く教室に入ってくれば、誰だって驚くだろう。もしも陸斗が逆の立場だったら、同じ様に騒いでた。
とは言え、そこまで分かってもイライラするものはイライラする。
やっぱ一緒にいてイライラしないのは、柚陽だけだったんすねぇ。昨日柚陽を選んだのは正解だったと思う。
今こうして騒いでる友人達では、まあ、バカ騒ぎくらいは出来ても、あんなに満たされた気分にはならなかっただろうし。
「そりゃあ柚陽と一緒に学校来るのも当たり前っすよ。朝ご飯も柚陽と食ったんだし」
「りっくんとオススメのパン屋さんに行ったんだよー」
「……は?」
陸斗が「うるさい」と言っても好き勝手騒いでいた友人達が、急に黙った。誰かの呟きが耳に入ったけど、「信じられない」と言わんばかりで、陸斗ですら滅多に出した事がないほど、冷え切っていた。
なにか変な事を言っただろうか。思わず不思議そうに首を傾げる陸斗の横で、柚陽はいつもの様に、こてん、可愛らしい仕草で首を傾けた。
「いや、なんつーか……お前がそういうコトすんの、ちょっと意外だったからさ」
「そっすか?」
でも確かに、海里なしで誰かと長時間一緒にいた事なんて、なかったかもしれない。
とは言え、今はその海里から離れたいのだけれど。ひどい仕打ちをする恋人より、甘やかしてくれる友人の方が良いに決まってる。
つーか恋人って、今のオレと柚陽みたいなコト、言うんじゃないっすか?一緒にご飯を食べて、イチャイチャしながらデザートをシェアして、一緒に寝る。朝はぬくもりを感じながら起きる。うん、正しい恋人そのものっす。
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