42 / 538

 1人納得したあたりで、陸斗(りくと)はそれとなく海里(かいり)の姿を探した。  仮にほとんど崩壊していたって、はっきり「別れよう」と言ってない以上、まだ関係は生きているのかもしれない。そんな中で陸斗が柚陽(ゆずひ)と一緒に教室へ入ってくれば、何か気にしてもおかしくないだろう。  嫉妬してほしいってワケじゃないっすけど。それでも、何か気にしていてくれれば、少しは可愛げだってある。空斗(そらと)だって、海里の子じゃない可能性も出てくる、かもしれない。それに散々人に辛い思いをさせたんだから、その1ミリくらいは味わうべきだ。  だから海里が少し顔をしかめていたら。少し辛そうな顔を見せていたら。  少しは、胸がすっとするかもしれない。ざまあみろ、オレはもっと辛い思いをしてたんだ、って嘲笑える。  少し嫉妬してくれてるかな?という可愛らしい感情よりは、そんな復讐心、嘲笑ってやりたいという歪んだ願望から陸斗は海里の姿を探して。  しかし結果、余計に苛立つ事になった。  なんせ海里は、広い教室でも無視しきれない程の騒ぎになったにも関わらず、陸斗達の方にまるで興味を示さなかったのだから。  いや、友人の大きな声に釣られて、ちらっと扉の方は見たのかもしれない。でも陸斗と柚陽の姿にも、陸斗の言葉にも、何かを感じるでなく、視線を戻したのだろう。今は手元の本に集中していた。  つまり海里の中で陸斗なんてどうでも良いのだ。  空斗もきっと実の子供なんだろう。それも、押し切られて作ってしまった子じゃなさそうだ。本心からその女が好きだったんだろう。  じゃあ、オレが浮気ってコトっすか?  間抜けな事この上ないが、自分の想像で陸斗は酷く苛立った。

ともだちにシェアしよう!