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人の家の湯舟を「狭い」と言うのは失礼かもしれないけど。
それでも、いくら柚陽 が小柄とはいえ、2人で入れば少し手狭に感じてしまう浴槽に浸かりつつ、つい視線は柚陽のうなじに向いていた。
ちょっとやり過ぎたかな、なんてガラにもなく反省してしまう。
赤いアトがうなじに点々と刻まれていた。あの後、柚陽から「オレもりっくんが好き」なんて震えた声で言った貰えた嬉しさで、いくつかアトを増やしてしまったのだ。
とは言え。
アトのつけ過ぎを反省していた筈なのに、つい目の前に柚陽のうなじがあると、吸い寄せられてしまうのは仕方がない。
それに浴槽は広くないから、自然と密着する形になるワケで。
陸斗 はまた、首筋に吸い付いた。サカりのついた猿みたいに思わないでほしい。誰だってムラッとするってば。
そのまま強く吸い上げれば、柚陽が声を漏らす。小さな声だったけど、風呂場というのもあってやけに大きく響いた。柚陽の顔が真っ赤になったのは、のぼせているからじゃないだろう。
「……も、りっくん、って、ばぁ」
柚陽の声は、抗議と言うより、甘えている様に聞こえてしまう。
「嫌だった?」
訊ねたのは、半分は意地悪。半分は本気で心配だった。
確かに柚陽にキスしたいし、自分のものだっていうキスマークはたくさん刻みたいけど、柚陽が嫌がる事はしたくないと陸斗は思っていたから。
これで本当に嫌だと言われたら、そりゃあ多少は辛いものがあるけど、なんとか自制する。ゆっくり時間を掛けて、柚陽が「良いよ」「りっくんのものってシルシ、いっぱい欲しいの」って言ってくれる様にすれば、それで良いんだし。
柚陽は、首を横に振った。
「嫌じゃないよ。嫌なワケないよ。だって、大好きなりっくんが、オレのものだーってシルシをくれてるんだもん。……ちょっと恥ずかしいけど」
熱が下に集まるのは、確かに感じたけど。
のぼせるとか、ハジメテなのにベッドじゃないとか、そういうのをすっ飛ばして柚陽を暴きたくなった衝動を、必死に抑えたオレは褒められるべきっす。あれ?それとも男の恥の方?
とは言え、なにかがぷつんと切れたのは確かで、それを抑える為に、柚陽の口内を散々暴きはしたんだけど。
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