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「それで? わざわざオレの時間を邪魔して、わざわざ自習室まで予約して。アンタは何者なんすか?」
自習室に着くなり、陸斗 は手近な椅子へ座り、机へと買ってきたパンを放り投げる。
最初の予定から随分と昼食がつまらないものになってしまったけど、まだ食べ物であるだけマシだろう。目の前に座った相手が見ず知らずの男だっていうのは、頂けないけど。
柚陽 と食堂で、イチャイチャしながら食べる筈だったんだけどなぁ。あーん、とかやったりして。
でもまあ、柚陽は勉強熱心で真面目な子だから、仕方ない。柚陽が頑張るって言うなら、陸斗としては応援するだけ。柚陽に頼まれれば、手取り足取り教えるだけだ。
男の返事は待たず、パンの袋を開けて1口食べる。良くも悪くも、「売店のパン」って味だ。
美味しさに感激はしないけど、吐きそうになるほどマズいワケでもない。普通。
「オレは波流希 。海里 の幼馴染だよ」
そのパンは、一瞬で、おそろしくマズい物になって。
人前であるとか、そういうのは失念して、陸斗は思いきりむせたし、さっきまでに食べてしまったパンを吐き出そうと、やっきになった。
残念ながら成果はなかったけど。
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