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 考えて、でも、その考えをすぐに振り払う。  有り得ない。人間は育った環境で変わると言うから。波流希(はるき)の言葉が本当なら、海里(かいり)の両親は、性的にだらしない人、というコト。小さな子供の前でも平気でソーイウ事をした人だ。  子供の頃、ソーイウのを見て育ったなら、海里はソレが普通だと思うはず。子供の前で、浮気相手の口内を貪り、体内に肉欲を埋めるのが普通だって理解して、大人になってからそんな人間になるはずなんだ。  転んだ事がない人間に、転んだ痛みが分からないように。  虐待された子供は、親になった時、虐待するように。  ふしだらで、欲望に忠実な環境で育ったのなら、海里もそうなるはず。  だから海里は、陸斗(りくと)に飽きたかなにかで、空斗(そらと)を言い訳にしてただけだ。  とは言え、ほんの少しだけ、同情の余地はあるのかも。だから波流希や(みなと)は騙されるんだろう。陸斗は考える。  でもオレは同情しねぇっすけど。性にだらしないなら、やっぱオレの考えてる復讐コースじゃぬるいかな?オレを騙した時点でオレにとっては悪っす。 「海里は頭が良いからね。それにオレもいた。良いのか悪いのか分からないけど、知識としては“一般的な家庭”っていうのを、知っちゃったんだよ。父親が、母親が、他の女や男を連れ込んで堂々と体を重ねるのはおかしい、ってね」

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