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間抜けな声が出た。
いや、ほんとに意味が分かんないんすけど。なんでリクエストに応えない事が、好きって事なんすか?陸斗 は本気で混乱して首を傾げる。
だって柚陽 はオレのためを思って、オレが好きだから、オレの好きな料理を作ってくれた。激辛のカレーだって、スパイスをたくさん使ってくれて。それが好きだからって事なのに、どうして作ってくれない海里 まで、「陸斗が好きだから」ということになるんだろう。
やっぱり、海里の味方である波流希 の言い分なんて、まともに受け取ってはダメか。
あやうく海里への恨みを多少軽くして、うっかり情に流されるトコだったと、陸斗は気を確かに持とうとして、
「陸斗くんは辛い物が好きだから、そのへん失念してるかもしれないけど。辛い物、辛すぎる物は、体に良くないって言われてるでしょ。これは辛い物に限らないけど、摂り過ぎは特に。陸斗くんは激辛や肉ばっかりリクエストするから、海里は海里なりに考えてたんだと思うよ。だから時々は、しっかり応えてくれてたと思うけど」
痛いほどの辛さの料理とか、がっつりした肉だとか。
2人の食卓に、そうした料理は、完全に並ばなかったワケじゃない。
ああ、ダメ。思い出したらダメっす。海里なんて人を騙して、ほんとは遊び人で。
胸の中にあるはずの憎悪を思い返そうとして、ふと、陸斗は思う。なんでオレは、必死になって海里を恨もうとしてるんすか。
初めて興味をくれた人なのに。初めて大切にしたいと思ってたのに、なんで今は恨んでるんだろう。恨みたいんだろう。
冷たくされたから?柚陽を裏切りたくないから?合わせる顔がないから?
波流希が浮かべる微笑みから、威圧が消えた気がした。
オレは、なんで恨もうとしてるんだろう。オレは何がしたくて、何をして欲しかったんだろう。
もう少しで掴めそうに思えた時。
自習室の外で、柚陽の悲鳴が聞こえた。
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