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「陸斗 くん。何しようとしてたのかな?」
冷え切った目を向けて、波流希 が訊ねた。その目は、周りを怯えさせるに十分だろう。向けられた本人以外も、思わず身構えてしまう様な、そんな目。
事実、波流希はそっちの味方である筈なのに、港 の方が緊張してるし、一瞬海里 の体が震えた。
対して、その目線をまともに受けた陸斗が平然としているのは、怒りが本能的な恐怖さえ、平然と上回ったからだろう。
今、陸斗の思考に、心にあるのは、海里への憎悪だけ。ちらっとでも海里を許してしまいそうになって、同情しそうになって。そんな自分への苛立ちもあって、尚更海里を憎んでいた。
なんで、このクズは、まだ平然と呼吸してるんすかね?
怒りの中、本気でそんな疑問が浮かび上がる。もはや陸斗の目には、海里は、人の姿で映っていない。
卑劣な人間を指して、ゴミだの虫けらだの色々言うけど、ゴミや虫けらの方が、まだまだまともだ。一緒にしたら、ゴミや虫けらに失礼だろう。
それほどに恨んでいたから。
だから波流希に、底冷えした眼差しを向けられても。その波流希が海里をどう思ってるか、今の今で身に染みて分かった直後でも。
平然と、なんら躊躇いなく、言い放ってしまうのだ。
「ゴミはゴミ箱に捨てるって、それこそガキでも分かってる事っすよ? だからゴミ以下のソレもポイしようと思って」
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