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海里(かいり)が! 海里が何したって言うんだよ!?」 「あ? この状況で言い逃れは、さすがに苦しいんじゃないっすか? それともゴミと一緒にいるから、頭、腐っちゃった? ああ、でも、コイツみたいなのゴミって言ったら、ゴミに失礼っすねぇ……なんて言えば良いんだろう?」 「お前……っ」  陸斗(りくと)に殴り掛かろうとした(みなと)は、けれど、そうしなかった。  被害者ぶって僅かに震えている海里を気遣ったのもあるだろうし、海里が首を弱々しく横に振って、必死で港の服を掴んでるっていうのもあるんだろう。  そんな光景が、陸斗を尚更、苛立たせる。  自分のオトコには、そーやって色目使って被害者ぶって。弱い人間は(しいた)げるんだ。つーか柚陽(ゆずひ)はコイツの友達でもあったんじゃないっすか?本当最低だ。 「親譲りのクズっすねぇ。親とおんなじ、淫乱で、性にだらしなくて、身勝手。しょせん付け焼き刃の愛情じゃ、ホントの愛なんて学べないから、そーいう風に歪むんすよ」  海里の目が、大きく見開かれた。徐々に虚ろになっていくのが分かるけど、それを見ても陸斗は苛立ちしか抱かない。  そうなりそうなくらい傷付いているのは、柚陽の方なのに。  続く、陸斗にとっては当然海里にぶつけるべき言葉は、しかし港によって阻まれた。 「違う! 海里はなにもしてねぇよ!! ……オレが、オレが勝手にしただけだ」 「うっわぁ。本当最低だね。人に罪を擦り付けるなんて。それとも、体使って頼んだんすか? アンタが親から学んだ事なんて、それくらいだもんねぇ。逆にお手の物でしょ。カラダ使って、自分の我を通すの」  波流希が殺気を放つのは分かったし、港の拳が握られるのも見えた。だけど恐怖は何もない。なんなら1発殴られて、コイツ等も追い出してしまえば良い。  淫乱に騙されただけだって思うとカワイソだけど、ここまで盲信したら、きっと同罪だ。 「……違う」  波流希が何かするより、港が殴り掛かるより早く、海里がぽつっと呟いた。

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