81 / 538
3
「海里 が! 海里が何したって言うんだよ!?」
「あ? この状況で言い逃れは、さすがに苦しいんじゃないっすか? それともゴミと一緒にいるから、頭、腐っちゃった? ああ、でも、コイツみたいなのゴミって言ったら、ゴミに失礼っすねぇ……なんて言えば良いんだろう?」
「お前……っ」
陸斗 に殴り掛かろうとした港 は、けれど、そうしなかった。
被害者ぶって僅かに震えている海里を気遣ったのもあるだろうし、海里が首を弱々しく横に振って、必死で港の服を掴んでるっていうのもあるんだろう。
そんな光景が、陸斗を尚更、苛立たせる。
自分のオトコには、そーやって色目使って被害者ぶって。弱い人間は虐 げるんだ。つーか柚陽 はコイツの友達でもあったんじゃないっすか?本当最低だ。
「親譲りのクズっすねぇ。親とおんなじ、淫乱で、性にだらしなくて、身勝手。しょせん付け焼き刃の愛情じゃ、ホントの愛なんて学べないから、そーいう風に歪むんすよ」
海里の目が、大きく見開かれた。徐々に虚ろになっていくのが分かるけど、それを見ても陸斗は苛立ちしか抱かない。
そうなりそうなくらい傷付いているのは、柚陽の方なのに。
続く、陸斗にとっては当然海里にぶつけるべき言葉は、しかし港によって阻まれた。
「違う! 海里はなにもしてねぇよ!! ……オレが、オレが勝手にしただけだ」
「うっわぁ。本当最低だね。人に罪を擦り付けるなんて。それとも、体使って頼んだんすか? アンタが親から学んだ事なんて、それくらいだもんねぇ。逆にお手の物でしょ。カラダ使って、自分の我を通すの」
波流希が殺気を放つのは分かったし、港の拳が握られるのも見えた。だけど恐怖は何もない。なんなら1発殴られて、コイツ等も追い出してしまえば良い。
淫乱に騙されただけだって思うとカワイソだけど、ここまで盲信したら、きっと同罪だ。
「……違う」
波流希が何かするより、港が殴り掛かるより早く、海里がぽつっと呟いた。
ともだちにシェアしよう!