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「港 は悪くねぇよ。オレが勝手にムカついて、柚陽 を襲おうとしただけ。ご丁寧にキスマークいっぱい付けてるし? 見せつけてるし? 案外コイツもゆるゆるなんじゃないかな、って思ってさ。手を出そうとしたら反撃にあっただけ」
「だけ、じゃねぇよ。柚陽がどんだけ怖い思いしたと思ってんすか? 柚陽は、アンタみたいなゴミ以下と違うんすけど。一緒にしないでくんない?」
海里 の言葉に陸斗 の憎悪は増していく。「何言ってんだ」「海里、もう諦めよう?」そんな声が陸斗の耳に一応届くけれど、意味は分からない。
でも、こんなクズに頭の中まで浸食された人間の言葉なんて、分からなくても良いかもしれない。
「つーか、反撃にあっただけ、で済ませる気っすか? 悪い事したら償うのは道理っすよね? まあ、ごめんなさいしても、ブタ箱にぶちこまれても、そんだけじゃオレ、許す気ないっすけど。色んな人間にマワされてさ、大学中にアンタの痴態バラまいて。刺されて、殴られて、いろんな意味でぐっちゃぐちゃにされて。ははっ、そうなりゃ、アンタの汚い腹ん中に見合った見た目になるっすねぇ。ああ、でも、これじゃ足んないかな? アンタに生き地獄を見せたいんだけど、これじゃご褒美?」
「まあな。オレ、ソーイウ事、大好きだし」
ぺろっと出された赤い舌は、醜くて、気持ち悪くて。まだ満足に戻っていない陸斗の理性を、また焼き切ってしまうには十分だった。
殺してやる。ああ違う、コイツは人間じゃないんだから、この言葉は不適切だ。じゃあ、なんて言えば。
考えるよりも先に手は動いていた。海里の首を締めあげる手に籠る力は、先程の比じゃない。ぎちっと、締める音が、陸斗の耳にも届いている。もう片方の手で、引き抜かんばかりの力で忌々しい赤い舌を引っ張り上げる。飲み込み切れない涎が、だらしなく零れて、汚らしい。でも、ゴミ以下のコイツにはお似合いじゃないっすか?
汚い。ゴミを触っちゃったから、あとで手を洗わないと。
港や波流希 の口が動いているけれど、何を言ってるかは分からない。ぎちぎちと、みしっと、音を立てて締めあげていく。
苦しそうにしてるけど、案外気持ちよくて喘いでるだけかも。こーいうプレイもあるって言うし。あれ?じゃあ復讐になってないじゃないっすか。ムカツク。
陸斗の中で思考が巡り、増した苛立ちは首を絞める力を強める。
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