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「……なあ、もう良いだろ。そんな嘘。空斗 はオレの子だ。オレが女と遊んで出来た子。今更になって押し付けられて、でも放っておけなかった。それだけだ」
「海里 くん、やさしい通り越して、たまにバカだよね」
そうっすよ。さすがにあのガキは柚陽によく似てるからその言い分は無理だけど、悪いのは全部、そこで自分のオトコには色目つかうゴミクズっす。
海里の言葉に期待を取り戻して、そう言おうとしたのに、そんな暇を陸斗 に与えず、柚陽は笑いながら言葉を続けた。
海里を見下すように笑って、大げさに肩をすくめてる。ゴミは見下されて当然だけど、あのやさしい柚陽が、さっきまで怯えていた柚陽が、そうしているのには、違和感しかなくて。
なんで。なんで。なんでっすか。なんで、まるで。
「オレはね、りっくんが大好きで、りっくんをオレのにしたかったから、アイツをけしかける事にしたんだよ。りっくん、海里くんにしか興味ないのは分かりやすかったし、子供苦手そうなの、目に見えて分かったもん。多分、海里くんの生い立ちを考えれば、海里くんは子供に尽くしちゃうしね」
まるで、自分のために子供を利用して、オレと海里を引き裂いた、みたいな言い方。
……みたい、じゃなくて、“そう”だったんだ。
「港 くんと先輩が、りっくんに海里くんの事話してないのも分かったよー。先輩と会ってれば、りっくんもさすがにツマンナイ嫉妬はしなかったと思うし、港くんは海里くんのデリケートな部分をぺらぺら話したりしないもんね。オレと遊ぼうって声を掛けて、海里くんの悪口言ってる時点で、ぜーんぶ確信しちゃった」
にぱっと、明るく笑う。港の、視線で人を殺しそうな眼差しにも、波流希 の冷え切った目にも。
情けないけど、ぼうぜんと柚陽を見つめるだけの陸斗にも、一切構わないで。
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