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 さすがに、無理させたっすかねぇ。  朝になっても隣でぐっすり眠る柚陽(ゆずひ)に、陸斗(りくと)は思わず苦笑した。柚陽が可愛いのは、いつもの事だけど、昨日はいつにも増して可愛かったから、つい。  色ボケとかじゃないと自分では思っているものの、そんな柚陽を前に、あっさり理性は崩れてしまったワケで。  裸に布団。白い肌には赤いアト。  そんな柚陽の姿をマジマジと見るのは、なにかとアレで、やさしく頭を撫でながら、定期的に視線を逸らす。  まあ、大学は1日くらい仲良く自主休講にしちゃって良いんだけどさ。真面目な柚陽はそれを嫌がるだろうし、そんな事したら1日をベッドの上で過ごす事になりそうで、陸斗はともかく、柚陽の方が休まらない。絶対に。 「せめてご飯くらい、用意しとくっすかねぇ」  呟いて、柚陽を起こしてしまわないよう、慎重にベッドから出る。  料理は「大得意!」と言えないけど、普通に出来る。なんなら柚陽イチオシで、陸斗も気に入ったパン屋に行っても良いし。  どっちにせよ、陸斗のせいで腰が重いだろう柚陽に、朝食を作らせるワケにはいかない。適当に部屋着を掴んで、袖を通す。今日の帰りにでも、服を何着か買っておかないと。  ベッドは柚陽と一緒に使ってるから不自由しないし、他の家具類も問題ないけど、服だけはそうもいかない。かと言って、あんなトコに置いてあった服には、もう、触れたくもないし。柚陽とはサイズが2つ3つ違うから、柚陽のを借りる事も出来ない。  柚陽が疲れていないようなら、大学終わりに買い物に行って、服を買おう。デートだ。  そんな考えに頬を緩ませて、陸斗は多少不慣れな手つきではあるものの、朝食づくりに取り掛かった。

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