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 そうは言っても、人の幸せを恨む人間は多い。  そもそも陸斗(りくと)は元から敵が少なくなかった。嫌いな人間が不幸になっていれば「ざまあみろ!」と嬉しくなるけど、嫌いな人間が幸せになってたら、イライラする。陸斗だって、思い出したくもないけど、もし海里(かいり)が幸せそうにしてたなら、その幸せを壊してやりたいと思うだろう。つーか、復讐するつもりだし。  そんな敵の多さに加えて、海里と、思い出すのもシャクだけど、付き合っていた頃。騙されていた頃。  あんだけ遊び人だったのに、上手く誤魔化して、周りをあざむく海里のせいで、「ラブラブなカップル」として有名になってしまっていた。吐き気がするっすけど。  それで陸斗と海里が別れて、陸斗には新しい恋人、海里は、少なくとも騙されてる人間の目には「ひとり落ち込んでる」って事で、尚更陸斗に向けられる目は、白い。なんせあのゴミは、うまーく周りを騙して、自分の評価は上げてたっすからねぇ。「カワイソウな子」を振る舞うのは、オトクイでしょ。  ただ、自分に対して白い目が向けられるのは、ともかく、陸斗が気に掛かる事は。 「つーか、柚陽(ゆずひ)は本当に大丈夫っすか? 何もない? 勘違いヤローからの嫌がらせとか、平気?」 「うん、大丈夫だよ。りっくんのおかげで、心配なし!」  柚陽が海里から陸斗を奪ったと、誤解して、変な正義感をかざす人間が、いないかどうか。  一応海里が何か言ってるみたいで、厄介な(みなと)波流希(はるき)は何もしてこないけど、そうした人間によって柚陽が傷付けられてしまう危険性は、ゼロじゃない。  だから陸斗は、周りへのけん制を込めて、あえて聞こえよがしに言う。  あと、ソーイウ勘違いを防ぐために、海里への盲信を解く言葉も忘れない。本当は復讐を考える以外で、海里の話なんてしたくないんだけど。 「ホント? それなら良いっすけど、海里のクズ、体使って周りを騙す、とか、平然とやってのけちゃうっすから」  名前を出しただけで吐き気がしたけれど、柚陽が作ってくれた料理を、あのクズなんかのために吐き戻してたまるかと、必死に耐えた。

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