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本当の幸せを得るために、
「は?」
「……チッ」
医務室に入れば、予想外の姿がそこにあった。ムカツく相手と声が重なる。その事で、ちょっと吐き気がした。何でこんなトコロに。言い掛けて、陸斗 はその言葉を飲み込んだ。
港 が医務室にいる理由なんて、2つしかないだろう。
海里 と行為に及んだか。あるいは、海里の乱交パーティに侵入者がないようにという見張りか。
どっちにせよ、嫌な顔を見てしまったのは確かだ。陸斗は露骨に顔をしかめて、港を強く睨み付ける。海里を背中に庇うのも忘れていない。
波流希 の姿は見えないけれど、背後から襲い掛かられる可能性もあるから、背後の用心も欠かさずに。声は聞こえないし、聞きたくもないけど、カーテンの向こうで行為に及んでる可能性もある、か。
港はと言えば、陸斗を強く睨みつつも、なにか声を掛けるでもないし、殴り掛かってくる様子もない。ただ睨んでるだけで、それ以外の事をしようとしない。
そういや、「手を出すな」みたいな事、あのゴミに言われたんだっけ?言うコト聞くなんて、さっすが、盲信してる人間は違うっすねぇ。相手が海里であるのは悪趣味この上ないけど、少し感心してしまう盲信っぷりだ。
「相変わらずオサカンっすねぇ。もう済んだなら、とっとと出て行ってくんねぇっすか?」
「……悪ぃ。ちょっと静かにしてもらえないか。今、やっと寝付いたトコなんだよ」
「は? どーせヤり疲れて寝てるだけでしょ。叩き起こさせてもらうっすよ」
「お前と一緒にするな。ここ最近、アイツ、まったく眠れてないんだよ。それが今、やっと寝れたんだから、邪魔しないでくれ」
もちろん、陸斗にその言い分を聞く意味もなければ、聞く必要もない。つーか、どうせそれも嘘っしょ。コイツも一緒になって騙そうとしてるのか、コイツも騙されてるのかは分からないけど。
止めようとする港を振り払って、陸斗はベッドのカーテンを開け放った。
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