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カーテンを開け放った先、露わになったベッドでは海里 が眠っていた。肌は青白いけど、それはいつもの事で、別に「顔色が悪い」「体調がすぐれない」って事もないだろう。多分、というか、確実に仮病。調子が悪いなんて、お粗末な言い訳だ。
つーか、オレにはもう、全部バレてるんすから、まだ素直に「ヤり過ぎて疲れた」って言えば良いのに。
「ほら、とっとと起きるっすよ。アンタがいると邪魔なんだけど」
肩を揺すって叩き起こそうにも、こんな汚い物に触りたくない。ゴム手袋して、その後消毒したとして……無理っすね。
だから心底からの不機嫌を隠さずに、言うに留めたんだけど、起きる気配はない。性にも汚ければ、寝るのにも汚いってか。それなら医務室よりゴミ捨て場がお似合いだと思うんすけど。
「起きろ! クズ!!」
一言怒鳴って、ベッドを蹴飛ばす。
学校内のベッドっていうのは結構頑丈でしっかりしてるから、陸斗がそれなりの力で蹴り飛ばしたところで、びくともしない。ガーン、なんていう鈍い音を立てて、あとは陸斗のつま先にジンジンとした痛みを残すだけ。
まったく、こんなヤツのせいで。
うんざりしたけど、その痛みの甲斐はあったみたいだ。海里の瞼が小さく揺れる。そろそろ起きるっすかねぇ。
ベッドのシーツを掴んで、海里には触れない様に気を付けて、思いきり引き抜く。海里は軽いし、コツを掴めば結構簡単に、ベッドで寝てる人間を床に落とせる物なのだ。
ガツン、なんて鈍い音が響く。人1人落ちたのに見合った音。
うるささに顔がしかめられるけど、さすがに起きただろう。すっげー不愉快っすけど、確かめる様につま先で床に寝転ぶゴミを突く。あとで靴は捨てないとね。
「う」。漏れ聞こえた低い声が不愉快だったから、そのまま爪先に力を入れて蹴飛ばした。さすがに普通のゴミみたく、簡単に吹き飛びはしなかった。
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