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「……痛いんすけど」
ヒリヒリと痛む手を、慌てて引っ込める。あのまま無視して伸ばしていたら、港 に引っ掛かれていてもおかしくなかった。そんな恨みも込めて、陸斗 は強く睨んだ。
港からも睨み返されるけれど、だから睨みたいのは、こっちなんすけど。
「悪い。オレが悪いから港には何もしないでくれ」
深々と頭を下げられても、特に何も思わない。いや、これを蹴飛ばしたり、地面にめり込む勢いで踏み潰して良いなら、まあ、手を弾かれた事くらいは不毛にするっすけど。
まだ頭を下げたままの海里 に、本当にそうしてやろうかと足を上げたところで、
「りっくん」
ちょいちょい。遠慮がちに服を摘ままれて、引っ張られる。
そうなればもう、海里も港も興味が無い。慌てて柚陽 へ視線を向けた。
「どうしたんすか? 柚陽。なんかされた? ゴミとか、アイツが、変な目で見てきたっすか?」
「ううん、それは大丈夫だよ。ただ、海里くん達も用があるから、オレ、自習室でも良いよ?」
こてん。いつもの様に柚陽は首を傾げる。確かにそれはそれで魅力的だけど、ベッドが空いてるのに柚陽にそんな事させられない。
机の上とベッドの上じゃ、どっちが負担にならないかなんて、分かりきってる。
それに、柚陽が「良いよ」って言ってくれて、行為のあと、めいっぱい労わるとして。そーいう普段とは違うシチュエーションに魅力を感じても。
海里達のせいでベッドを使えないっていう事が、陸斗にとっては我慢できなかった。
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